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国際離婚の親権はどの国の法律で決まる?通則法第32条と共同親権のルールを解説【2026年最新版】

11 分前
読了時間: 27分

国際結婚や国際離婚において、お子様の親権、監護権、財産管理といった「親子間の法律関係」をどの国の法律で決めるかは、ご家族の今後の人生を根底から左右する極めて重大な問題です。日本に住んでいても、すべて日本の法律で決まるとは限りません。まず確認するのは、子と父母の国籍、そして子の生活の拠点です。


日本においてこの法律の選び方を定めているのが「法の適用に関する通則法第32条」であり、親権、子を育てる役割、住む場所、財産の管理についての判断に関係します。一方、養育費には別の法律の選び方があり、分けて考える必要があります。

さらに日本法が適用されるケースでは、2026年4月1日施行の改正民法による「共同親権」制度も重要となりますが、海外旅行や旅券申請のすべてに双方の署名が必要なわけではありません。


本記事では、2026年現在の公式情報に基づき、多国籍家族における複雑な法律適用プロセスから、確認する順番と手続きまですべてを網羅的に解説します。

読者の皆様が直面する不安や疑問を解消し、お子様の福祉を最優先にした正しい選択ができるよう、必要な知識と手続きをお伝えいたします。


国際離婚における親権と準拠法をイメージした地球儀と六法全書
国際結婚・国際離婚において、お子様の親権にどの国の法律が適用されるか(準拠法)は、ご家族の未来を左右する極めて重要な問題です。


✅ 目次



















✅ 法の適用に関する通則法第32条の全体要約国際離婚・親権


■ 最初に、子と父母の本国法が一致するかを確認します。子の本国法が父母のどちらかと同じならその子の本国法を使い、同じでなければ子が生活の拠点を置く場所の法律(常居所地法)を使います。


■ 親子間の法律関係(親権・監護権等)と養育費は別のルールです。親権を判断する法律と、養育費を判断する法律は別々に選ぶため、同じ国の法律になることも、違う国の法律になることもあります。


■ 日本法が適用される場合の2026年の共同親権でも、日常の養育や急迫の事情では一方の親だけで決められる例外があります。外国の出入国や旅券手続きはそれぞれ個別の確認が必要です。


⚠️ すべての読者の方にとっての重要事項


日本の法律(法の適用に関する通則法第32条)では、子供の親権や監護権について「どの国の法律を適用するか(準拠法)」を2段階のプロセスで決定します。これは親の都合ではなく「子供の福祉と生活の実態」を最優先に守るためのルールです。親子間の法律関係を正しく把握することは、お子様の将来の生活基盤を確保するための第一歩となります。


⚠️ 一部の読者(多重国籍や国際離婚を控える方)にとっての重要事項


子が二重国籍等で日本国籍が含まれる場合、日本法が優先して子の本国法となります。また、共同親権下での子の移動について、短期の観光旅行と転居・長期留学は区別して考えます。合意できない重要事項は家庭裁判所で判断する仕組みがありますが、無断での海外渡航は外国法上の犯罪やハーグ条約の返還対象となる重大なリスクがあるため、離婚後の取り決めを公的な書面で残すことが不可欠です。


👉 【国際離婚・親権問題で不安を抱えている方へ】


「今の状況で、我が子にはどの国の法律が適用されるのだろうか?」「相手に無断で子どもを連れて帰っても大丈夫なのだろうか?」


国際家族法は非常に複雑であり、初期の判断を少しでも誤ると、愛するお子様と離れ離れになってしまう危険性があります。お一人で悩まず、まずは現在の状況をお聞かせください。



1.通則法第32条とは――「使う法律」を決めるルール


条文を、2つに分けて読む


「法の適用に関する通則法」は、国をまたぐ法律問題について、どの法律を使うかを定めています。選ばれた法律を準拠法(じゅんきょほう)といいます。第32条の条文は、次のとおりです。


第32条(親子間の法律関係)


親子間の法律関係は、子の本国法が父又は母の本国法(父母の一方が死亡し、又は知れない場合にあっては、他の一方の本国法)と同一である場合には子の本国法により、その他の場合には子の常居所地法による。


大切なのは、「本国法が同じかを確認する」「同じでなければ常居所地法を使う」という順番です。


対象は、親子になった後の権利と義務


第32条は、法律上の親子関係が成立した後の権利・義務に関係します。理解しやすいよう、代表的な問題を次の5つに整理できます。


  • 親権

    子を育て、保護し、財産を管理する権利と義務を誰が持つか


  • 監護・教育

    誰が日々の世話をし、教育について判断するか


  • 居所の指定

    子がどこで暮らすかを誰が決めるか


  • 財産管理・代理

    子の財産を管理し、子に代わる法律行為を誰が行うか


  • 職業の許可

    子が職業に就くことについて、誰が許可するか


条文が対象を「この5つだけ」に限定しているわけではありません。親権者の指定・変更や親子交流も含め、問題の性質を確認して適用する法律を判断します。


離婚そのものに適用する法律は第27条で判断するため、離婚と親権も分けて確認します。

また、認知や養子縁組によって「親子関係を成立させる問題」は、第28条から第31条の領域です。養育費は後述する別法によります。


実務上の注意(現場のリアルな声)
「親子の問題だから全部同じ法律」とまとめず、親権、養育費、親子関係の成立を分けて整理しましょう。ここを混同すると、裁判所での申し立てが根本から覆る原因となります。


2.準拠法は、国籍から生活の拠点へと順番に確認する


子と父母の国籍や常居所地(生活拠点)を比較・確認する手順を示す天秤の図
通則法第32条では、まず「子と父母の国籍の一致」を確認し、一致しない場合に「生活の拠点(常居所)」で判断するという厳密な順番があります。

第1段階:子と父母の本国法が同じか


子の本国法が父または母の本国法と同じなら、子の本国法が適用されます。例えば、子と母が日本国籍のみを持つ場合、両者の本国法は日本法です。父が外国籍でも、第32条による親子間の法律関係には日本法を使います。


父母の一方が死亡し、または知れない場合は、条文に従って他方との一致を確認します。単に別居していることや、連絡が取りにくいことだけで、比較する親を外してよいとは判断しません。


第2段階:同じでなければ、子の常居所地法


本国法が父母のどちらとも同じでない場合は、子の常居所地法を使います。「常居所」は、子が実際に生活の拠点を置く場所です。子の常居所が日本なら日本法、外国ならその場所の法律が基準になります。


⚠️ 「日本に住んでいるから日本法」と、最初から決めることはできません。先に子と父母の本国法を比べます。一致する本国法がある場合は、生活の拠点だけを理由に日本法へ切り替えられません。


父の国籍が優先される仕組みではない


かつての法例には、親子間の法律関係を父の本国法で定める規定がありました。1989年の改正で、子の本国法と常居所地法を用いる仕組みに改められています。現在の第32条も、父と母のどちらかを性別で優先する規定ではありません。


実務上の注意(現場のリアルな声)
「父が外国人なので、その国の法律に従うしかない」という思い込みも、「日本に来れば日本法になる」という思い込みも避けてください。正確な法律の順序を知ることが、不利な条件を回避する唯一の手段です。


3.常居所は、住民票だけでは決まらない


子が実際にどこで暮らしているかを見る


常居所は、一時的な旅行先や、書類上だけの住所とは区別されます。第32条に「何か月住めば常居所になる」という一律の期間は定められていません。相談時には、次の事実を整理すると生活の実態を説明しやすくなります。


  • 居住の経過

    どの国で、いつから、どのような理由で暮らしているか。


  • 住まいと養育

    誰と同居し、誰が日々の世話をしているか。


  • 学校・保育

    実際に通っている学校や保育施設、通学・通園の期間。


  • 生活上のつながり

    使う言語、友人や親族との交流、地域での生活。


  • 医療と生活記録

    通院、健診、日常生活を示す記録。


  • 滞在の目的

    一時帰国、旅行、留学、移住のどれに当たるのか、その経緯。


(※これらは事情を整理するための項目であり、全項目を満たせば常居所が決まるという法定のチェック表ではありません。他にも裁判所が総合的に考慮する要素が存在します。)


子の年齢によって、説明に役立つ資料も変わります。例えば、乳児には在学証明書がありません。学校の書類がないという理由で、生活の拠点を説明できなくなるわけではありません。


転居させれば有利な法律を選べるわけではない


子を他国へ移動させただけで、直ちに常居所や適用法が変わるとは限りません。移動が他方の監護権を侵害する場合は、返還手続きも問題になります。常居所の判断と、移動の適法性は分けて確認する必要があります。


実務上の注意(現場のリアルな声)
「住民票を移したから解決した」と考えず、実際の居住・養育の経過を時系列でまとめましょう。

👉 【常居所や適用される法律が分からずお困りの方へ】


「今の生活実態で、本当に日本の法律が適用されるの?」「相手の国の法律が適用されたらどうなるの?」といった疑問は、法律の専門家でなければ正確な判断が困難です。事実関係を一緒に整理し、お子様にとって最も安全な法的手続きをご提案します。



4.二重国籍・無国籍・州ごとに法律が違う場合


二重国籍や州法の違いなど複雑な国籍状態を表すパズルのイラスト
お子様や親が二重国籍の場合、通則法第38条の規定に従い、まず適用する本国法を一つに絞る手続きが必要となります。

二重国籍では、まず本国法を1つに絞る


子や親が複数の国籍を持つ場合は、通則法第38条第1項に従います。


  • 国籍に日本が含まれる場合:日本法

  • 日本国籍がなく、国籍を持つ国の中に常居所のある国がある場合:その国の法律

  • 日本国籍がなく、国籍を持つどの国にも常居所がない場合:国籍を持つ国のうち、最も密接な関係のある国の法律


この作業を子と父母について行い、その後で第32条の一致を確認します。「外国の国籍も共通しているから、好きな方を選べる」という仕組みではありません。


日本国籍が含まれていても、そこで判断は終わらない


子が日本と外国の二重国籍なら、子の本国法は日本法です。しかし、それだけで第32条の準拠法まで常に日本法になるわけではありません。父母の本国法との一致も必要です。父母のいずれとも一致しなければ、子の常居所地法へ進みます。


例えば、父母がともに日本国籍を失っている一方、子には日本国籍が残っている場合は、現在の国籍と生活状況を改めて確認します。


アメリカは「何州の法律か」まで確認する


州によって家族法が異なる国では、国名だけで確認を終えられません。

第38条第3項により、その国の規則が指定する法律を使います。その規則がなければ、その人に最も密接な関係がある地域の法律を本国法とします。

したがって、父子ともアメリカ国籍であることだけで、同じ州法になると断定しないことが大切です。


無国籍・常居所不明の場合にも補足規定がある


第38条第2項は、無国籍者について一般に常居所地法を使うとしていますが、第32条への適用には例外を置いています。無国籍者の常居所地法を、そのまま本国法に置き換えて一致を判断する扱いではありません。


また、子の常居所地法を使う場面で常居所が知れないときは、第39条により居所地法が問題になります。無国籍、国籍不明、常居所不明は同じ状態ではないため、区別して確認します。


実務上の注意(現場のリアルな声)
旅券を持っていないことだけで「無国籍」と判断しないでください。出生記録や関係国の国籍法による確認が必要です。


5.3つの事例で見る、法律の選び方


次は、国籍と本国法が記載のとおり確認され、子の常居所が日本にあるという前提の例です。


事例

父の国籍

母の国籍

子の国籍

適用される法律(準拠法)

第32条による決定の理由

事例A

ドイツ

日本

日本

日本法

母子の本国法が同じなので、日本法(単に日本に住んでいるからではなく、母子の本国法が一致するため)

事例B

アメリカ

韓国

アメリカ

確認された州法

父子の本国法が同じ州法と確認できる場合、その州法。「日本法の方が便利だから」と自由に切り替えることはできません。

事例C

イギリス

中国

ブラジル

日本法

子の本国法が父母のどちらとも同じでないので、生活の拠点である常居所地法(日本法)を使います。


(※なお、この表は国籍取得の説明ではありません。実際にどの国籍を持つかは、出生地だけでなく各国の国籍法と身分関係から確認します。)



6.親権と養育費は、別々に準拠法を決める


養育費には「扶養義務の準拠法に関する法律」を使う


通則法第43条第1項は、親族関係から生じる扶養義務について、同法の準拠法に関する章を適用しないと定めています。そのため、子の養育費については、「扶養義務の準拠法に関する法律」を確認します。第2条の基本的な順序は、次のとおりです。


  1. 扶養を受ける人の常居所地法。子への扶養では、子の常居所地法を確認します。

  2. その法律では扶養を受けられないときは、当事者の共通本国法

  3. それでも扶養を受けられないときは、日本法


これは、希望する金額が低かったときに、有利な法律へ自由に変更する制度ではありません。親権と養育費は「別の方法で法律を選ぶ」のであり、「必ず違う国の法律になる」わけでもありません。


二重国籍の扱いも、そのまま流用しない


養育費の共通本国法を調べる際に、第38条の日本国籍優先のルールを、そのまま当てはめることはできません。扶養義務は、通則法の当該章の適用から除外されているためです。

また、子の養育費と、離婚した元配偶者への扶養も別です。後者には、扶養義務の準拠法に関する法律第4条の特則があります。


実務上の注意(現場のリアルな声)
親権の合意書を作っただけで、養育費の金額・支払期限・回収方法まで決まったと思わないようにしましょう。


7.2026年の共同親権――日本法が適用される場合の基本


2026年施行の共同親権制度導入をイメージしたカレンダーと親子のシルエット
準拠法が日本法となる場合、2026年4月以降は離婚後の「共同親権」のルールが適用され、親権の実務が大きく変わります。

離婚後は、父母双方または一方を親権者にする


2026年4月1日から、離婚後の親権者を父母双方とする共同親権が可能になりました。

父母の一方だけが親権者になる単独親権も残っています。共同親権と単独親権のどちらか

が、すべての家族に優先するわけではありません。子の利益を基準に決めます。


父母で合意できない場合は、家庭裁判所が判断します。一方が反対していれば必ず単独親権になる、という制度でもありません。


裁判所が単独親権としなければならない場合


家庭裁判所は、父母双方を親権者にすると子の利益を害すると認められる場合、一方を親権者と定めなければなりません。民法第819条第7項は、具体的に次の事情を挙げています。


  1. 父または母が、子の心身に害を及ぼすおそれがある場合。

  2. 父母間の暴力・心身に有害な言動のおそれ、話合いがまとまらない理由、ほかの事情を考慮し、共同で親権を行うことが困難な場合。


DVは、殴る・蹴るといった身体的暴力だけではありません。精神的・経済的・性的な暴力によって共同の判断が困難になる場合もあります。診断書がないことだけで、こうした事情が否定されるわけではありません。


一方、主張しただけで結論が決まるわけでもなく、個別の事情が判断されます。

(※これらは一例であり、他にも裁判所が考慮する要素が存在します。)


以前の単独親権は、自動では共同親権にならない


施行前に離婚して単独親権となっている場合も、親権者変更を申し立てることはできます。

ただし、当事者が合意しただけで変更はできません。家庭裁判所の調停または審判が必要です。裁判所は、従来の合意に至った経過、事情の変化、子の生活を踏まえて判断します。


実務上の注意(現場のリアルな声)
共同親権は、子が両方の家に同じ日数ずつ住む制度ではありません。実際の養育方法と親権者の定めは、分けて話し合います。


8.共同親権で、一方の親だけが決められること


原則と例外を、行為ごとに確認する


父母双方が親権者なら、原則として共同で親権を行います。ただし、民法第824条の2は、次の場合に単独での行使を認めています。


  1. 他方の親が親権を行うことができないとき。

  2. 子の利益のために急迫の事情があるとき。

  3. 監護・教育に関する日常の行為をするとき。


「共同で行う」とは、共同で判断することです。すべての申請書や契約書に、双方が署名するという意味ではありません。


行為

日本法上の基本的な整理

日々の食事・服装、通常の学校連絡

日常の行為として単独で行える

短期間の観光目的の海外旅行

通常は日常の行為。ただし外国の出入国・監護権のルールは別

子の転居

同じ学区内でも、基本的に日常の行為ではない

入学・転学・長期留学

基本的に共同で判断する事項

心身に重大な影響を与える医療

基本的に共同で判断する事項

緊急の医療、DV・虐待からの避難

急迫の事情があれば単独で行える

子の財産管理

日常の監護・教育という理由だけで単独には行えない


個別に親権行使者が指定されている場合や、監護者の定めがある場合には、その内容も確認します。


「監護者」の定めがある場合は、さらに確認する


父母の協議や裁判で一方を監護者と定めた場合、その人は、民法第824条の3により、監護・教育に関する事項を単独で行えます。居所や学校に関する判断でも、この定めが重要になります。ただし、子と同居しているだけで、法律上の監護者として定められたことにはなりません。


また、監護者だからといって、子の財産管理やすべての法定代理を単独で行えるわけではありません。親権者・監護者・特定事項の親権行使者を区別します。


急ぐ必要がある場面では、安全を優先する


「急迫の事情」とは、話合いや裁判所の手続きを待っていては、子の利益を害するおそれがある場面です。DVや虐待からの避難は、その例に含まれます。暴力が現に行われている瞬間だけに限られません。


⚠️ 「共同親権だから、避難や緊急治療にも相手の同意を待つ必要がある」とは考えないでください。ただし、国境を越える避難では、外国法とハーグ条約の問題も別に確認する必要があります。



9.海外旅行・パスポート・ハーグ条約は分けて考える


空港でパスポートと航空券を持っている手の写真
共同親権下において、お子様を伴う海外渡航やパスポートの申請を行う場合、原則として他方親の明確な同意が必要となります。

短期旅行と、海外移住・長期留学は違う


日本法上、短期の観光旅行は通常、日常の行為です。共同親権だから、短期旅行も一律に他方の同意が必要とはいえません。


一方、海外移住・長期留学は、子の生活に大きな影響を与えます。通常の短期旅行と同じ扱いではなく、必要な共同の判断、監護者の定め、裁判所の手続きを確認します。


また、旅行のための渡航について了解があっても、そのまま帰らず住み続けることまで同意されたとは限りません。目的・期間・帰国予定を区別して記録しましょう。


日本のパスポートは、常に双方の署名が必要ではない


未成年者の日本旅券について、外務省は、一方の親権者の署名で、両親権者の同意を代表するものとみなして手続きを行うと案内しています。したがって、「共同親権では、必ず父母双方が署名し、別々の同意書を出す」という説明は正確ではありません。ただし、一方の署名で受け付ける扱いと、他方の反対を無視してよいことは別です。


他方から不同意が提出されている場合


もう一方の親権者から、あらかじめ申請窓口や在外公館へ不同意の意思表示が提出されている場合は、通常、両親の合意が確認されてから発給されます。不同意は、原則として、親権者であることを証明する書類を添えた自署の書面で行います。発給のため、不同意を示した親が自署した同意書の提出を確認する扱いが案内されています。


また、子の連れ去りを犯罪とする国の在外公館では、事前の不同意がなくても、双方の同意の有無を確認する場合があります。


渡航同意書は、国によって要否が違う


渡航先や経由国、航空会社が、同行していない親の同意書や親子関係の証明を求める場合があります。これは、日本の民法上の親権行使や、旅券発給とは別の確認です。日本のパスポートが発給されたことだけで、出入国や子の移動がすべて適法になるわけではありません。書式、署名者、認証、翻訳、提出部数は、関係国・航空会社に確認します。世界共通の書類一式はありません。


ハーグ条約は、親権者を決める裁判ではない


ハーグ条約は、国境を越える不法な子の連れ去り・留置について、元の常居所地国への返還を扱う民事上の仕組みです。子が16歳未満であること、関係国間で条約が適用されること、常居所地国の法に基づく監護権の侵害とその行使状況が重要になります。


返還手続きは、親権者を最終的に誰にするかを決める手続きではありません。返還しないことが認められる例外もあるため、「無断の移動ならすべて同じ結果」とは判断できません。

「ハーグ条約違反だから自動的に国際手配される」という説明も不正確です。逮捕や国際手配は、子の連れ去りを犯罪とする外国の国内法に基づいて問題になります。


実務上の注意(現場のリアルな声)
短期旅行の同意、移住の同意、旅券申請の同意、出入国用の同意書を、1つの同意で全部済むものとして扱わないでください。

👉 【お子様を連れての海外渡航・帰国をご検討中の方へ】


「旅行のつもりでも、相手にハーグ条約違反だと訴えられないか?」「渡航同意書はどう準備すればいいの?」


国境を越える移動は、一度の判断ミスが「誘拐」とみなされる等、取り返しのつかない結果を招きます。航空券を予約する前に、必ず国際家族法に精通した弁護士へご相談ください。出発国・渡航先・子の国籍・現在の裁判や合意の内容を整理し、安全な手続きをサポートします。



10.合意は書面に残す。ただし、公正証書でできることには限りがある


家族のルールとして、具体的に記録する


子の生活については、次の内容を分けて記録すると、後の行き違いを減らせます。


  1. 養育

    が暮らす場所、日々の世話、学校や医療の連絡方法。


  2. 重要事項の決定

    転居、進学、重大な医療、財産管理の相談方法。


  3. 海外への移動

    目的、行先、期間、同行者、帰国予定、変更時の連絡。


  4. 親子交流

    日時、受渡し、連絡手段、子の体調や安全に応じた変更。


  5. 養育費

    金額、支払日、振込先、終期、進学費・医療費の扱い。


  6. 意見が分かれた場合

    相談先、調停の利用、緊急時の対応。


    (※ただし、合意内容は子の利益に沿う必要があります。合意書に書けば、どのような条件でも有効になるわけではありません。)


強制執行認諾文言が役立つのは、主に金銭の支払


公正証書は、公証人が作成する公文書です。養育費について、支払をしなければ直ちに強制執行を受けてもよいと認める文言を付けた公正証書を作ると、金銭の支払を回収する手段になります。

しかし、その文言を付けただけで、親権・転居・旅券・渡航の同意まで一律に強制できるわけではありません。公正証書の作成は、すべての国際離婚で法律上必須というものでもありません。調停調書や審判による方法もあります。


公正証書で、裁判所の指定に代えることはできない


離婚後の親権者の変更や、民法第824条の2第3項に基づく親権行使者の指定には、家庭裁判所の手続きが必要です。「今後は一方が全部決める」と公正証書に書いても、裁判所による指定そのものにはなりません。


なお、2026年4月からは、養育費の先取特権に基づく回収手続きも整備されています。「公正証書がないから回収手段がない」とは限りません。利用できる手続きは、請求の根拠と証明資料から確認します。


実務上の注意(現場のリアルな声)
外国に財産や勤務先がある場合、日本の公正証書や裁判書がその国でどう扱われるかも別に確認します。


11.合意できないときの手続きと準備書類


家庭裁判所への調停申立ての手続きや書類準備をイメージした写真
当事者間での協議がまとまらない場合、日本の家庭裁判所へ親権者変更や親権行使者指定の調停を申し立てる必要があります。

何を決めたいのかによって、手続きを選ぶ


  • 離婚と離婚後の親権を話し合いたい

    夫婦関係調整調停(離婚)


  • 離婚後の親権者を変えたい

    親権者変更の調停・審判


  • 共同で決めるべき特定の事項について対立している

    親権行使者の指定の調停・審判


  • 日々の養育を担う人や分担を定めたい

    監護者の指定・監護の分掌に関する手続き


  • 養育費・親子交流を決めたい

    それぞれの調停・審判


日本法が適用されることと、日本の裁判所が事件を扱えることは別です。相手が海外にいる場合や、外国で既に裁判がある場合は、日本の裁判所の管轄と外国の判断の効力も確認します。


親権者変更・親権行使者指定の調停で使う標準書類


次は、この2種類の調停について、裁判所が案内する標準的な書類です。


  1. 申立書と、その写し1通。

  2. 申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)。

  3. 相手方の戸籍謄本(全部事項証明書)。

  4. 未成年の子の戸籍謄本(全部事項証明書)。

  5. 申立ての内容に合った事情説明書。

  6. 進行に関する照会回答書。

  7. 送達場所等届出書。

  8. 親権行使者指定の対象が養子縁組の代諾なら、養親となろうとする人の戸籍謄本。


外国人には日本の戸籍がないため、出生・国籍・婚姻・親子関係を証明するどの外国書類を使うか、訳文と併せて裁判所に確認します。外国の裁判書や既存の合意書も、内容に応じて提出します。


調停の申立先は、原則として相手方の住所地、または当事者が合意した家庭裁判所です。手数料は、いずれも子1人につき収入印紙1,200円と、裁判所が定める郵便料です。(※これらは標準書類であり、事情により追加資料が必要です。)


裁判所の判断後も、必要な届出を確認する


調停がまとまらない場合、この2種類の事件は審判へ移り、裁判官が判断します。親権者変更について戸籍の届出義務がある場合は、調停成立または審判確定の日から10日以内に届出をします。調停調書謄本、または審判書謄本・確定証明書を用意し、提出先で確認してください。DVで住所を知られたくない場合は、書類を提出する前に、裁判所へ住所の秘匿や非開示の扱いを相談してください。


実務上の注意(現場のリアルな声)
準拠法を調べるために集める資料と、申立ての必須書類は同じではありません。住民票・在学証明書・医療記録も、目的と必要性を確認して準備しましょう。


12.事前準備と要件確認チェックリスト


相談前や手続きを進める前に、次の9項目を整理しましょう。


  1. 子の国籍:二重国籍の場合はすべての国籍と、その根拠。


  2. 父母の国籍:現在の国籍と、帰化・国籍離脱の経過。


  3. 法律上の親子関係:出生、認知、養子縁組の記録。


  4. 子の常居所:実際の生活拠点と、国を移動した時期・理由。


  5. 現在の親権・監護:誰が親権者・監護者か、既存の裁判・合意があるか。


  6. 解決したい問題:親権、養育費、親子交流、旅券、渡航を区別できているか。


  7. 共同親権の例外:日常の行為、急迫の事情、監護者の定めに当たるか。


  8. 海外との関係:渡航先・経由国、外国の裁判、同意書の条件。


  9. 子の安全と意向:暴力・虐待のおそれ、本人の気持ち、生活への影響。


手続き前に要件や事実関係を整理するためのチェックリスト記入のイメージ
専門家へ相談する前に、ご家族の国籍、生活の拠点、現在の親権の状況など、分かる範囲で事実関係を整理しておきましょう。


13.行動と手順用ToDoリスト


次の9段階を基本に、必要な手続きを進めます。


  1. 事実を時系列にする。出生、国籍変更、婚姻・離婚、転居、裁判の経過をまとめる。


  2. 根拠資料を確認する。旅券、戸籍、外国の出生・国籍証明、裁判書を整理する。


  3. 常居所の資料を選ぶ。住まい、通学、養育、通院の実態を示す必要な資料を準備する。


  4. 親権の準拠法を確認する。第38条で本国法を整理し、第32条の順序で判断する。


  5. 養育費と外国の手続きを別に確認する。第32条の結論をそのまま流用しない。


  6. 子の生活について話し合う。安全に協議できる場合に、親権・監護・教育・医療・交流を整理する。


  7. 合意を適切な形で残す。合意書、公正証書、調停調書の役割を区別する。


  8. 対立や危険があれば、裁判所・弁護士へ相談する。必要な申立てと緊急対応を選ぶ。


  9. 決定後の届出・渡航手続きを完了する。戸籍、学校、旅券、出入国、必要な在留手続きを確認する。


実務上の注意(現場のリアルな声)
第32条で外国法が指定された場合、その国の準拠法ルールを使って日本法へ戻す「反致」は、第41条ただし書により認められません。外国法の内容を確認せず、日本法で結論を出さないことが大切です。

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ご家族の在留資格や日本で暮らすための行政手続きは、行政書士等の専門家へご相談ください。親権・監護権の争いや国際的な子の移動、裁判所の手続きは、国際家族法を扱う弁護士への相談が必須となります。相談時は、国籍・生活拠点・現在の親権の記録をご用意いただくと、状況が伝わりやすくなります。



14.よくある質問


Q1. 父がアメリカ国籍、母が日本国籍で、子が日米の二重国籍なら、親権にはどちらの法律を使いますか?


子の本国法は、通則法第38条第1項により日本法になります。母の本国法も日本法なら、子と母の本国法が一致します。そのため、第32条による親子間の法律関係には日本法を使います。ただし、外国の裁判所が扱う場合は、その国の法律の選び方も確認が必要です。


Q2. 通則法第32条は、親子のどのような問題に関係しますか?


親権、日々の養育・教育、子の住む場所、財産の管理、職業の許可に関係します。これらは代表例であり、条文が対象を5項目に限定しているわけではありません。認知や養子縁組による親子関係の成立は、別の条文で判断します。養育費についても、第32条とは別の法律で準拠法を決めます。


Q3. 親権と養育費は、同じ国の法律で決められますか?


同じ国の法律になることはありますが、選び方は別です。親権は通則法第32条、養育費は「扶養義務の準拠法に関する法律」で判断します。子の養育費は、まず子の生活の拠点がある場所の法律を確認します。そこで扶養を受けられない場合は、共通本国法、日本法の順に確認します。


Q4. 子の「常居所」は、住民票や滞在期間だけで決まりますか?


住民票や滞在期間だけで、一律に決まるものではありません。子が実際に生活の拠点を置いている場所を、生活の実態から判断します。住居、養育、通学、滞在の目的と経過を整理しましょう。第32条には「何か月住めば決まる」という固定の期間はありません。


Q5. 共同親権では、短い海外旅行にも他方の親の同意が必要ですか?


日本法上、短期の観光旅行は通常、日常の行為に当たり、単独で行えます。ただし、移住や長期留学まで同じ扱いになるわけではありません。外国の監護権、出入国条件、航空会社が求める同意書は別に確認します。旅行後に帰国せず滞在を続ける場合は、ハーグ条約の返還手続きも問題になり得ます。


Q6. 子の本国法が父母のどちらとも同じでない場合は、どの法律を使いますか?


通則法第32条により、子の常居所地法を使います。これは、子が実際に生活の拠点を置いている場所の法律です。二重国籍の場合は、先に第38条で子と父母それぞれの本国法を確認します。国籍の名前だけでなく、本国法が一致するかを確かめることが大切です。


Q7. 共同親権の子の日本旅券には、必ず父母双方の署名が必要ですか?


常に双方の署名が必要なわけではありません。外務省は、一方の親権者の署名で両親権者の同意を代表するものと扱っています。ただし、他方が事前に不同意を提出している場合は、通常、合意の確認後に発給されます。国外の申請では追加確認もあるため、申請窓口に現在の親権と不同意の有無を伝えて確認してください。



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