【行政書士が徹底解説】「定住者」ビザの全貌!申請条件から日系人・元日本人・素行善良要件の壁まで
更新日:8月5日

🌟 この記事でわかること。日系人の「定住者」ビザ
日本に在留する外国人の方や、そのご家族・雇用主の皆様へ。日本での生活の基盤となる「在留資格(ビザ)」の中でも、就労制限がなく、永住への最短ルートともなる最強の資格が「身分系在留資格」、とりわけ【定住者】です。本記事では、複雑で難解な「定住者」ビザの全貌を徹底解説します。
日系人、元日本人、離婚や死別、連れ子の呼び寄せなど、多様なケースごとの申請条件や必要書類、そして「なぜ不許可になるのか」という審査の裏側(素行善良要件の厳格化の歴史など)まで、事例を交えて余すところなく見ていきます。
この記事を読めば、あなたやあなたの大切な人が、日本で安心して長く暮らすための最適なルートと、絶対に失敗しないための必須知識が明確にわかります。ぜひ最後までじっくりとお読みください。
📖 目次
📑 3つの結論:この記事の要約テキスト
✅ 【メリット絶大】就労制限のない「身分系在留資格」と【定住者】の基本
日本での活動内容に制限がなく、どんな仕事でも自由に働けるのが「身分系在留資格」の最大の特徴です。中でも【定住者】は、法務大臣が特別な理由を考慮して居住を認める強力な資格であり、一般的な就労ビザが永住許可まで10年かかるのに対し、原則5年で永住申請が可能となる特権を持っています。
日系人や元日本人、定住者の家族など、その類型は多岐にわたり、日本に深く根を下ろして生活したい外国人にとって、まさに「最強のビザ」の一つと言えます。
✅ 【厳格な審査の壁】日系人の歴史と「素行善良要件」の絶対ルール
定住者ビザ(特に日系3世や4世)の審査において最大の壁となるのが「素行善良要件」です。過去の無計画な受け入れによる社会問題化を背景に、入管は治安維持のため極めて厳しいチェックを行います。
母国での無犯罪証明書の提出は必須であり、過去の傷害や窃盗などの犯罪歴だけでなく、日本国内での度重なる交通違反(スピード違反や駐車違反など)の反則金履歴であっても、遵法精神がないとみなされ一発で不許可になる厳格な運用がなされています。
✅ 【立証責任は申請者に】血統の証明と日系4世の「定住者への道」
定住者の取得には、戸籍謄本や海外の出生証明書をパズルのように繋ぎ合わせ、1世代も途切れることなく血統を客観的かつ法的に証明する重い責任が伴います。
また、かつては「最長5年の出稼ぎ」であった日系4世(特定活動43号)の制度も2023年に大改正され、N2以上の日本語能力や5年間の適正な滞在などの厳格な条件をクリアすれば、ついに【定住者】へ昇格し、家族帯同や永住への道が開かれるという歴史的なブレイクスルーが起きています。
1.身分系在留資格と「定住者」の基礎知識
日本に在留する外国人にとって、在留資格は日本での生活の基盤となる最も重要なものです。その中でも「身分系在留資格」と呼ばれるカテゴリは、活動内容に制限がないことから「メリットの多い在留資格」とされています。
ここでは、行政書士の視点から、身分系在留資格の中でも多様なケースが存在する【定住者】に焦点を発て、その種類、申請条件、離婚・死別・連れ子などの具体的なケーススタディ、そして実際の申請に必要な書類までを解説します。
1-1. 身分系在留資格とは?

在留資格は大きく分けて「活動系(就労や留学など)」と「身分系」に分かれます。
身分系の在留資格とは、「何をするために」日本にいるのかではなく、「どのような身分で」日本にいるのかという観点で付与される資格です。
身分系に分類されるのは、以下の4つです。
永住者
日本人の配偶者等
永住者の配偶者等
定住者
※正確な一覧については 出入国在留管理庁「在留資格一覧表」 も併せてご参照ください)。
💡 【最大のメリット:就労制限なし】
これらが「メリットの多い」在留資格とされる最大の理由は、就労制限がないことです。
活動系在留資格【技術・人文知識・国際業務など】や「資格外活動許可」を得た留学生とは異なり、身分系の在留資格は、法律で認められている仕事ならどんな仕事でも、何時間でも働くことができ、たくさん稼ぐことも可能となります。風俗営業などの店舗での就労も制限されません。
💡 【永住者へのハードル低下】
また、最強の在留資格である【永住者】へのハードルも低く設定されています。一般的な活動系在留資格が原則10年以上の在留を求められるのに対し、【定住者】は原則5年以上で永住許可の申請が可能となります。
ただし、申請の前提として、現在持っている定住者の在留期間が『3年』または『5年』(最長の在留期間)を付与されている必要があります。
1-2. 【定住者】とは何か?
【定住者】とは、他のいずれの在留資格には該当しないものの、我が国において相当期間の在留を認める特別な事情があると法務大臣がその特別な理由を考慮して居住を認める者を指します。
定住者は大きく分けて、以下の2つに分類されます。
「告示定住」: 法律の告示で定められているもの。
「告示外定住」: 告示には定められていないが法務大臣の裁量で認められるもの。
⚠️ 特に「告示外定住」は、入国管理局の裁量幅が大きく、また海外から外国人の方を直接呼び寄せるための「在留資格認定証明書」の交付申請ができないという特徴があります。
2.「定住者」の類型一覧と該当ケース(「告示定住」の内容と具体例)
在留資格【定住者】には様々な類型があります。まずは全体像を把握しましょう。
在留資格【定住者】は、法務大臣が特別な理由を考慮して居住を認める者にあたえられます。その中で、あらかじめ法務大臣が類型を定めて告示しているものが「告示定住」です。
📌 告示1号:インドシナ難民とその配偶者又は子
【対象者】
インドシナ難民と、その配偶者又は子。
【具体例】
ベトナム、ラオス、カンボジアなどその他多数ある中から、国際連合難民高等弁務官事務所が国際的な保護の必要なものとして我が国に対してその保護を推薦するもののうち次のいずれかに該当する者に係る人を対象としています。
日本社会に適応する能力がある者であって、生活を営むに足りる職に就くことが見込まれるもの、その配偶者またはこれらの者の子、父母若しくは未婚の兄弟姉妹
上記の要件をクリアして、上陸許可を受けて上陸しその後引き続き本邦に在留する者が当該許可を受けて上陸する直前まで一時滞在していた国に滞在する当該者の親族であって相互扶養が可能であるもの
📌 告示2号:削除
※ここで、日系人に関する要件がなぜこれほどまでに厳格なのか、その歴史的な背景について解説します。
📖 発端:1990年の入管法改正と「無計画な受け入れ」
1980年代後半のバブル経済期、日本は深刻な「単純労働力(工場などのいわゆる3K職場)の不足」に悩まされていました。
そこで日本政府は1990年に入管法を改正し、「日本人の血を引く日系人(2世・3世)とその配偶者であれば、活動制限なく自由に日本で働ける」という在留資格【定住者】を新設しました。
政府には「同じ日本人の血を引いているのだから、日本の文化や社会にすぐ馴染むだろう」という極めて安易な期待がありました。これにより、ブラジルやペルーなどから日系3世とその家族が数十万人規模で一気に日本へ出稼ぎにやってきました。
⚠️ 現実:発生した3つの深刻な社会問題
しかし、やってきた日系3世の多くは、世代が下っているため日本語が全く話せず、日本の文化も知りませんでした。ここで、国が生活支援や日本語教育を怠った結果、以下の3つの連鎖的な社会問題が爆発しました。
① 非正規雇用による「貧困と雇用の不安定」
日系人の大半は、自動車工場や部品工場などで「派遣社員」や「請負労働者」として非正規雇用されました。景気が良い時は重宝されましたが、社会保険にも加入させてもらえず、2008年のリーマン・ショックなどの不況時には「雇用の調整弁」として真っ先に大量解雇され、多くの日系人家庭が深刻な貧困に陥りました。
② 言葉の壁による「子供の不就学(教育からの脱落)」
親が非正規労働で長時間働き、日本語も分からないため、子供の教育に手が回りませんでした。日本の公立学校に入っても日本語のサポート体制がなく、いじめや学習の遅れから学校に行かなくなる「不就学(ドロップアウト)」の日系人の子供が数万人規模で発生しました。
③ 社会からの孤立と「若者の非行・犯罪の増加」
学校にも行けず、仕事もない日系人の若者たちは、社会から完全に孤立しました。その結果、一部の地域(静岡県浜松市、愛知県豊田市、群馬県大泉町など、工場が多く日系人が集住する都市)で、不良グループ(カラーギャングなど)の結成、窃盗、強盗、薬物犯罪などの重大な非行・犯罪が多発し、地域社会との深刻な軋轢(あつれき)を生みました。
🛑 限界を迎えた自治体と、国の「政策転換」

日系人が多く住む地方自治体(市役所など)は、外国人住民への行政サービスや治安維持の負担で限界に達しました。自治体は国に対して「ただ労働力として受け入れるだけで、生活支援のルールを作らない国の政策は無責任だ。
治安の悪化を防ぐための対策をしてほしい」と強く訴えました(外国人集住都市会議など)。これを受け、国(法務省)は「血筋が同じだからといって、無条件で受け入れるのは間違いだった」と過去の甘い見通しを認め、治安維持のために「ルールの厳格化」へと大きく舵を切りました。
🛡️ 具体的な法規制(国が取った防衛策)
日系3世の配偶者への厳格化
前回まで解説していた部分です。日系コミュニティでの犯罪を防ぐため、2006年の告示改正で「日系3世が配偶者を呼ぶ時は、必ず母国の無犯罪証明書を提出させよ(素行善良要件)」という厳しい足切りルール(5号ハ)が作られました。
日系4世に対する「極めて厳しい制度」の創設(2018年)
世代がさらに下る「日系4世」については、3世と同じ失敗(日本語が話せないまま工場労働に従事し、社会から孤立すること)を絶対に繰り返さないため、国は2018年に新しい制度を作りました。
しかしその条件は、「入国前に一定の日本語能力があること」「年齢は18歳~30歳まで」「家族(配偶者や子供)を一緒に連れてきてはいけない(単身のみ)」「最長5年で帰国すること」という、人権の観点からも賛否が分かれるほど極めて厳しいものでした。
結果として、この制度を使って来日する日系4世はほとんどいないのが現状です。
日系3世や4世に対し、国が厳しい要件(無犯罪証明書の提出や、家族帯同の禁止など)を課している真の理由は以下の通りです。
「1990年代に国が『労働力』として無計画に日系人を大量に受け入れた結果、言葉や教育の壁から貧困と孤立が生じ、一部で非行や犯罪が多発するという社会問題を引き起こしてしまった。
国は、その『過去の政策の失敗(治安の悪化)』を二度と繰り返さないため、そして日本の地域社会の安全を守るために、後付けで極めて厳しい条件(フィルター)をかけざるを得なくなったから」です。
日系人の方々の中には、日本社会に溶け込み、真面目に働き、立派に貢献している方が数多くいらっしゃいます。
国が警戒しているのは日系人そのものではなく、「言語や文化の壁がもたらす貧困と孤立の連鎖」であり、それを法律の力(入管法の除外規定や素行善良要件)で物理的に防ごうとしているように思われます。
💡 基礎知識:日系人と元日本人の定義の違い
※ここから登場する日系人と元日本人の定義の違いを理解しておくとスムーズです。
🌎 日系人(にっけいじん)とは
「血統・ルーツ」に焦点を当てた言葉です。
過去に日本から海外へ移住した人々と、その現地で生まれた子孫(2世、3世、4世など)の総称を指します。彼らが現在どこの国籍を持っているか、あるいは過去に日本国籍を持っていたかどうかは問いません。
特徴
移住した世代によって「1世(移住者本人)」「2世(現地で1世の親からの生まれた子供)」「3世(2世の子供、1世の孫)」と数えられます。
2世や3世以降になると、生まれながらにして外国籍であり、日本国籍を一度も持ったことがない人が大半を占めます。
日本語を話せない、あるいは日本の文化に直接触れたことがない人も多く含まれます。
【具体例:ハワイ生まれの日系3世のAさん】
Aさんの祖父母は戦前に日本からハワイへ農業移民として渡りました(日系1世)。両親(日系2世)もAさんもハワイ(アメリカ)で生まれ育ったため、生まれながらのアメリカ市民です。
Aさんは日本国籍を持ったことは一度もなく、日本語も話せませんが、血筋としては日本のルーツを持っているため「日系人(日系アメリカ人)」と呼ばれます。
🛂 元日本人(もとにほんじん)とは
「国籍の履歴(法的なステータス)」に焦点を当てた言葉です。
出生時などには「日本国籍」を持っていたものの、その後、外国への帰化などによって日本国籍を喪失・離脱した人を指します。
特徴
日本の国籍法(第11条)では、自己の志望で外国の国籍を取得した場合、自動的に日本国籍を失うと定められています。
人生のある時点までは確実に日本人(日本国籍保持者)であったため、日本での生活経験があり、日本語を母語とする人がほとんどです。
民族的なルーツ(純粋な日本人かどうか)は関係なく、「法的に日本のパスポートを持っていた過去があるか」が基準になります。
【具体例:アメリカへ帰化した元日本人のBさん】
元日本人のBさんは東京で日本人の両親のもとに生まれ、日本の大学を卒業するまで日本国籍を持っていました。
その後、仕事でアメリカへ渡り、長年生活した末にアメリカ国籍(市民権)を取得しました。この時点でBさんは日本の国籍法により日本国籍を喪失したため、法的な立場としては「元日本人(現在はアメリカ人)」となります。
📊 両者の違いと重なる部分

それぞれの違いを分かりやすく比較表にまとめました。
比較項目 | 日系人(2世・3世など) | 元日本人 |
言葉の焦点 | 血筋・民族的ルーツ | 国籍の履歴(法的手続き) |
日本国籍の有無 | 最初から持っていないことが多い | 過去に必ず持っていた |
母語・文化 | 居住国の言語・文化であることが多い | 日本語・日本文化であることが多い |
日本のパスポート | 取得したことがない(持てない) | 過去に持っていた |
※ 両方に当てはまるケース(重なる部分)
この2つの言葉は完全に独立しているわけではなく、同一人物が両方に当てはまるケースもあります。
「日系1世」であり「元日本人」であるケース
日本からカナダに移住し(日系1世)、その後カナダ国籍を取得して日本国籍を喪失した場合、その人はルーツや移民コミュニティの観点からは「日系人(日系カナダ人)」であり、法的な国籍の観点からは「元日本人」となります。
「ルーツ」と「法律上のステータス」の違い
「日系人」は、曾祖父母や祖父母が日本人であれば、本人が日本に一度も行ったことがなくても名乗ることができる「ルーツ」の言葉です。
「元日本人」は、本人が過去に日本の国籍を有し、現在それを手放した状態を指す「法律上のステータス」の言葉です。
3.【重要】入管法における「2つの絶対的ルール」
💡 「子の身分に基づく在留資格」
「身分に基づく在留資格は、『出生した瞬間の親の国籍』で全てが決まる」
親が後から国籍を離脱しようが取得しようが、出生時の事実は覆りません。
「親が同行せず『単独で子供が入国』する場合でも、該当する在留資格(在留資格の種類)は絶対に変わらない」
現在の親の居住地に関わらず、本人の持つ「血統の身分」は不変です。ただし、単独入国の場合は「身元保証人」「生活維持能力(監護者)」「素行善良要件(定住者の場合)」という実務上の極めて厳格な審査が伴います。
(1)親が日本国籍を失う「前」に生まれた実子
このケースは、出生した瞬間に親が「日本人」であったことが最大のポイントです(日本の国籍留保をせず外国籍となった前提)。
①「両親の双方が日本国籍離脱の前」に海外で生まれた実子
取得すべき在留資格: 「日本人の配偶者等」
根拠
出生時に両親が日本人であるため、入管法上の「日本人の実子」に該当します。
具体例
太郎と花子(共に当時日本国籍)の間にアメリカで実子Aが誕生し、米国籍のみを取得。その後、両親はアメリカに帰化。
単独入国の場合
親がアメリカに残留し、Aが単独で日本に入国する場合でも在留資格は「日本人の配偶者等」です。ただし、日本に住む親族などを身元保証人・監護者として立てる必要があります。
②「両親のいずれかが日本国籍離脱の前」に海外で生まれた実子
取得すべき在留資格: 「日本人の配偶者等」
根拠
日本の国籍法は父母両系血統主義を採用しています。出生時に「片親」でも日本人であれば、その子は「日本人の実子」として扱われます。
具体例
太郎(当時日本国籍)とメアリー(米国籍)の間にアメリカで実子Bが誕生。その後、太郎は帰化して日本国籍を喪失。
単独入国の場合
Bが単独入国する場合も、変わらず「日本人の配偶者等」です。日本に住む親族などを身元保証人・監護者として立てる必要があります。
(2)親が日本国籍を失った「後」に生まれた実子

出生した瞬間、親はすでに「外国人(元日本人)」です。したがって、この子たちは「日本人の実子」にはなれません。ここで「定住者(告示第3号)」が登場します。
③「両親の双方の国籍離脱の後」の海外で生まれた実子
取得すべき在留資格: 「定住者(告示第3号)」
根拠
出生時に両親は外国人ですが、両親自身はもともと日本の親から生まれた「日本人の子として出生した者」です。したがって、その実子であるCは、法律上「『日本人の子として出生した者』の実子」にズバリ該当するため、告示第3号となります。
単独入国の場合
Cが単独で入国する場合も「定住者(告示第3号)」です。ただし、定住者告示の明文規定により「素行が善良であること(母国での犯罪歴がないこと等)」が絶対条件となります。
④「両親のいずれかの日本国籍離脱の後」の海外で生まれた実子
このケースは「もう一方の親の国籍は何か?」によって結論が2つに分岐します。
パターンA:もう一方の親が「まだ日本人」の場合
取得すべき在留資格: 「日本人の配偶者等」
根拠
片親がすでに帰化していても、もう一方の親が日本人である瞬間に生まれたため、「日本人の実子」となります。
パターンB:もう一方の親が「最初から外国人(または既に帰化済み)」の場合
取得すべき在留資格: 「定住者(告示第3号)」
根拠
出生時に両親ともに外国人ですが、元日本人の親は「日本人の子として出生した者」であるため、その実子は*『日本人の子として出生した者』の実子」として告示第3号となります。単独入国のルールも「素行が善良であること(母国での犯罪歴がないこと等)」が絶対条件となります。
(3)日本国籍離脱「前」に生まれた実子の、さらに実子
いわゆる「日系3世」の王道ケースです。「親(実子)が生まれた時の祖父母の国籍」が鍵となります。
⑤「両親の双方の日本国籍離脱の前」の海外で生まれた実子の実子(孫)
取得すべき在留資格: 「定住者(告示第3号)」
根拠
祖父母が日本国籍を離脱する「前」に生まれた親(実子)は、法律上「日本人の子として出生した者」です。その実子のさらに実子(孫)は、「『日本人の子として出生した者』の実子」となり、ここでも告示第3号に該当します。
単独入国の場合
孫が単独で入国する場合も「定住者(告示第3号)」ですが、未成年の場合は日本での保護者・生活費の出処の厳格な証明が、成人の場合は就労先等の身元保証人と素行善良要件が問われます。
⑥「両親のいずれかの日本国籍離脱の前」の海外で生まれた実子の実子(孫)
取得すべき在留資格: 「定住者(告示第3号)」
根拠
祖父母の「片方」だけでも日本人であった時に生まれた親(実子)であれば、その親は「日本人の子として出生した者」です。したがって、その実子(孫)も当然に「『日本人の子として出生した者』の実子」として告示第3号に該当します。
単独入国の場合
孫が単独で入国する場合も「定住者(告示第3号)」ですが、未成年の場合は日本での保護者・生活費の出処の厳格な証明が、成人の場合は就労先等の身元保証人と素行善良要件が問われます。
4.その他の組み合わせ(第4号・第5号・第6号の真の姿)
上記①〜⑥以外のイレギュラーパターンを網羅します。
⑦「国籍離脱の後」に生まれた実子の、さらに実子(日系3世の裏パターン)
ケース: (帰化後に生まれた実子)に、さらに子供(孫)が誕生した場合。
取得すべき在留資格: 「定住者(告示第4号)」
根拠
親(2世)は帰化後に生まれたため「日本人の子として出生した者」ではありません。したがって、その子供(3世)は「日本人の子〜の実子(3号)」の枠から外れます。
しかし、祖父母(1世)は「かつて日本国民として本籍を有したことがある者」です。したがって、その子供(3世)は「『日本人の子として出生した者でかつて本籍を有したことがあるもの』の実子の実子」という、告示第4号の極めて限定的な定義にピタリと当てはまります。
単独入国の場合
孫が単独で入国する場合も「定住者(告示第4号)」ですが、未成年の場合は日本での保護者・生活費の出処の厳格な証明が、成人の場合は就労先等の身元保証人と素行善良要件が問われます。
⑧両親の「国籍離脱の前」に生まれた実子が外国籍に帰化した後に生まれた実子(孫)
ステップ1:親(2世)の法的身分の確定
親(2世)は、祖父母(1世)が日本国籍を離脱する「前(=祖父母が日本人の時)」に生まれています。 この瞬間、親(2世)は入管法上「日本人の子として出生した者」という強力かつ絶対的な身分を生涯にわたって取得します。
ステップ2:親(2世)の「外国籍への帰化」による影響
その後、親(2世)は外国籍に帰化しました。現在の国籍は外国人です。 しかし、ここが最大のポイントです。
「後から外国籍に帰化した」という事実は、「過去に日本人の子として生まれた」という歴史的事実を法的に消滅させるものではありません。
入管法において、親(2世)は外国籍になった後であっても、依然として「日本人の子として出生した者」というカテゴリーに属し続けます。
ステップ3:孫(3世)の誕生と身分の決定
そして、孫(3世)が誕生します。出生した瞬間、親(2世)はすでに外国籍ですが、ステップ2で解説した通り、親(2世)は法律上「日本人の子として出生した者」です。 したがって、その実子である孫(3世)は、現在の親の国籍が何であれ、「『日本人の子として出生した者』の実子」にズバリ該当することになります。
※ 定住者告示第3号の条文は、あくまで「日本人の子として出生した者の実子」までしか救済していません。「日本人の子として出生した者の実子の実子(ひ孫)」の場合、法律の条文に「実子の実子(ひ孫)」という言葉が含まれていないため、文言の限界として、ここで「日本人の子として出生した者の実子」という血統に基づく無条件の定住者ルートは途切れてしまうのです。
※ ちなみに、告示第4号にも「かつて本籍を有したことがあるものの『実子の実子』(=孫まで)」と規定されているため、「かつて本籍を有したことがあるものの『実子の実子』の実子(ひ孫)に該当する方は4号を使うことはできません。
この場合には、後述する「日系4世問題(特定活動)」となります。
【定住者告示第3号の条文定義】
「日本人の子として出生した者の実子(前一号又は第八号に該当する者を除く。)であつて素行が善良であるものに係るもの」
この条文の定義に完璧に合致します。
【具体例で見る「定住者(告示第3号)」の適用】
前提条件
祖父(当時日本国籍)と祖母(外国人)の間に、ブラジルで実子(父・2世)が誕生した。この時点で父は「日本人の子として出生した者」となる。
その後、父(2世)はブラジル国籍のみを選択・帰化し、日本国籍を喪失(または最初から日本国籍を留保せずブラジル国籍のみ)。
父(ブラジル国籍)と母(ブラジル国籍)の間に、孫(3世・申請人)が誕生した。
結論
孫(3世)は、出生時に両親ともにブラジル国籍(外国人)ですが、父が「日本人の子として出生した者」であるという絶対的要件を満たしているため、「定住者(告示第3号)」を取得して日本に中長期滞在することが可能です。
※実務上の絶対条件(省略なき補足)
告示第3号である以上、前回の改訂版でも強調した「素行善良要件(素行が善良であること)」が絶対条件として課されます。
血統上は完璧に条件を満たしていても、本国での犯罪歴や度重なる交通違反などがある場合は、この明文化された要件に抵触し、不許可となります。
また、単独で入国する場合は、日本国内の身元保証人(未成年の場合は確実な監護者と生活費の立証)が厳しく審査される点も同様です。
⑨すでに日本にいる親に呼ばれる「連れ子・未成年の実子」
ケース
親(定住者や日本人の配偶者等)が日本で生活しており、母国に残していた外国籍の未成年の実子(または再婚相手の連れ子)を日本に呼び寄せる場合。
取得すべき在留資格: 「定住者(告示第6号)」
根拠
ここがかつて私が誤認した「第6号」の真の姿です。血統(日系人)をベースとする3号・4号とは異なり、「日本にいる親の扶養を受ける、未婚で未成年の実子」を保護するための在留資格が「告示第6号」です(単独入国ではなく、親との同居が前提です)。
なお、実務上、18歳直前の呼び寄せは「就労目的」を疑われ審査が非常に厳しくなる傾向があります。将来を見据え、できる限り早めに呼び寄せの手続きを開始することをお勧めします。
⑩日本国籍を離脱した「元日本人ご本人」

<ケース>(1)
アメリカに帰化して日本国籍を離脱した太郎と花子(生まれた時からアメリカ国籍)が、老後は太郎が生まれた日本で一緒に暮らしたい場合
【「日本人の子として出生した者」の真意】
入管実務において、この言葉は「出生の瞬間に、父または母のどちらかが日本国籍を有していた者」を指します。
ポイント
「日本人の子として出生した」という事実は、その後に本人が日本国籍を離脱して外国人になったとしても、歴史的事実として消滅しません。
したがって、アメリカに帰化して現在は米国籍である太郎さんも、生まれた瞬間は「日本人の子」であったため、法律上は永遠に「日本人の子として出生した者」というカテゴリーに該当し続けます。
法律の優先順位として、告示(定住者)を適用するまでもなく、法律本体(日本人の配偶者等)の条件を完璧に満たしているため、より上位で安定した「日本人の配偶者等」が適用されるのです。
【なぜ「告示5号イ」と間違えやすいのか?(条文の罠)】
【定住者告示第5号イの正確な条文】
「日本人の子として出生した者として日本人の配偶者等の在留資格をもって在留する者の配偶者」と規定されています。
「具体的に」
元日本人本人(太郎さん)
「日本人の子として出生した者」として「日本人の配偶者等」を取得。
その配偶者(外国人)花子さん
「日本人の配偶者等」の在留資格をもって在留する者で日本人の子として出生したものの配偶者(告示第5号イ)
上記の本人(太郎さん)と結婚しているため、「定住者(告示第5号イ)」を取得。
つまり、告示5号イは「元日本人の妻(または夫)」を救済するための規定であり、元日本人本人に向けられたものではないのです。
具体例:太郎さんと花子さんのケース
太郎さん(元日本人・現米国籍)
1960年、東京で日本人夫婦の間に生まれた。
1990年、米国に帰化し、日本国籍を喪失。
2024年、日本に帰国。
判定
出生時に日本人の子であった事実は不変。よって、在留資格は「日本人の配偶者等」。
花子さん(太郎さんの妻・生まれたときから米国籍)
生まれながらの米国人で、日本国籍を持ったことはない。
判定
花子さんは「日本人の子」ではありません。しかし、「日本人の配偶者等(元日本人)」である太郎さんの配偶者です。よって、在留資格は「定住者(告示第5号イ)」。
<ケース>(2)
花子さんが「日本人の親から生まれた(出生時に親のどちらかが日本人だった)」場合
もし花子さんが「日本人の親から生まれた(出生時に親のどちらかが日本人だった)」のであれば、花子さんも間違いなく「日本人の配偶者等」の在留資格を取得することができます。
【「配偶者」としてではなく「実子」として取得する】
ここが最大のポイントです。もし花子さんが日本人の親から生まれていた場合、花子さんは「夫(太郎さん)の在留資格にぶら下がる形」で在留資格を取る必要が一切なくなります。
これまでの花子さん(生粋のアメリカ人の場合)
自分自身の血統に日本との繋がりがないため、夫(太郎さん)が持つ身分を利用して「定住者(告示第5号イ)」を取得するしかありませんでした。
今回の花子さん(親が日本人の場合)
花子さん自身が、出生時に「日本人の親」を持っていたという絶対的な歴史的事実を有しています。したがって、夫の存在に関係なく、花子さん自身の血統という独立した権利によって、入管法別表第二の「日本人の子として出生した者(実子枠)」に該当することになります。
【夫婦そろって「日本人の配偶者等」になる(具体例)】
このケースにおける、太郎さんと花子さんの在留資格の構造を具体的に見てみましょう。
太郎さん(元日本人・現米国籍)
出生時に親が日本人であったため、「日本人の配偶者等(実子枠)」を取得。
花子さん(日系2世・現米国籍)
父親または母親が日本人であった時に生まれたため、太郎さんと同じく「日本人の配偶者等(実子枠)」を取得。
【結論】
この場合、二人は「夫婦だから」同じ在留資格になるのではありません。「二人とも偶然、日本人の親から生まれたという要件をそれぞれ独立して満たしているから」、結果として夫婦そろって「日本人の配偶者等」という最強の身分系在留資格を取得できるのです。
【実務上の圧倒的メリット】
「定住者(告示5号イ)」を使わなくて済む
「定住者」という法務大臣の裁量による在留資格ではなく、法律で直接規定された「日本人の配偶者等」で夫婦ともに申請できるため、許可の安定性が飛躍的に高まります。
結婚の信憑性審査を回避できる
もし花子さんが「定住者(告示5号イ)」で申請する場合、「太郎さんと本当に結婚しているのか? 偽装結婚ではないか?」という厳しい審査が入ります(交際歴の証明や写真の提出などが必要です)。
しかし、花子さん自身が「日本人の実子」として申請する場合、審査されるのは「花子さんと花子さんの親との血統の繋がり(戸籍や出生証明書)」だけです。夫婦関係の証明は(在留資格の取得要件としては)不要になります。
離婚・死別時のリスクゼロ
万が一、日本移住後に太郎さんと花子さんが離婚したり、太郎さんが亡くなったりした場合でも、花子さんのビザは「太郎さんの妻」としてではなく「日本人の実子」として発給されているため、花子さんの在留資格には一切影響がありません。そのまま日本に住み続けることができます。
※ 日本の国籍法では、全くの外国人と比較して、元日本人(かつて日本国民であった者)に対しては、帰化の要件を一部緩和して「簡易帰化」という制度も存在します。
ただし、実務上は「なぜ一度捨てた国籍を再び取得したいのか」という動機や、日本への定着性が非常に厳しく審査されます。
5.日系4世問題:日系3世(告示3号・4号等)の子供として生まれた「ひ孫(4世)」
⑪日系4世問題:日系3世(告示3号・4号等)の子供として生まれた「ひ孫(4世)」
定住者告示の枠組みは、これまで見てきた通り、原則として「孫(日系3世)」までで途切れます。日系3世の子供として生まれた「ひ孫(日系4世)」には、かつて日本で親族と共に暮らすための特別なビザは存在しませんでした。
しかし、日系社会からの長年の強い要望により、2018年に創設されたのが「日系四世受入れ制度」です。
そしてこの制度は、2023年12月の大規模な運用見直しにより、単なる出稼ぎビザから「定住・永住への登竜門」へと劇的な大進化を遂げました。
ここでは、日系4世が直面する厳格な要件と、法改正によって開かれた「定住者への道」について、実務の最前線の視点から徹底解剖します。
※ 制度の最新要件やサポーター制度の詳細は 出入国在留管理庁「日系四世の更なる受入れ制度の案内」 をご確認ください。
💡 取得すべき在留資格の正体:「特定活動(告示第43号)」の真意
日系4世が入国時に取得する在留資格は、1世〜3世のように最初から「定住者」ではありません。法務大臣が個々の外国人について特に活動を指定する「特定活動(告示第43号)」となります。
なぜ最初から定住者ではないのか?
入管庁は日系4世を「単なる労働力」ではなく、日本と現地の「架け橋となる人材(日系四世サポーター制度の趣旨)」として育成したいという明確な意図を持っています。
したがって、この在留資格は「一定の期間内に日本語と日本文化を習得できるかを見極めるための、一種の『試用期間(プロベーション)』の在留資格」という性質を持ちます。血統さえ証明すればよかった3世までとは、根底の思想が全く異なるのです。
⚠️ 「特定活動(告示第43号)」の厳格な要件(最新の法改正対応・完全版)
この在留資格を取得し、日本に入国・滞在を継続するためには、以下の要件をすべて満たさなければなりません。実務上、どこでつまずくのかを詳細に解説します。
① 年齢要件(18歳〜35歳以下):年齢制限の壁と特例
日系4世が入国するための年齢要件は、単なる「18歳〜35歳」という大雑把なものではありません。
入国前(正確には「在留資格認定証明書交付申請時」)の年齢と、その時点で有している「日本語能力」によって、適用されるルートが明確に2つに分かれます。
ここには、「若い層はポテンシャル(将来性)で受け入れるが、年齢が高い層には即戦力としての適応力を求める」という入管庁のシビアな設計思想が隠されています。
【ルートA:基本ルート(18歳以上30歳以下)】
対象者
申請時に18歳以上、30歳以下であること。
求められる日本語能力(入国時)
「N5」または「N4」相当以上(基本的な挨拶や、ゆっくりとした短い会話が理解できるレベル)。
制度の意図(ポテンシャル採用)
まだ年齢が若いため、日本に入国した時点では日本語がカタコト(N5レベル)であっても、日本社会で働きながら言葉や文化を吸収し、適応していくための「時間的な猶予」があるとみなされます。
ワーキングホリデーに近い感覚で、日本社会への定着をじっくり促すための基本ルートです。
【ルートB:特例ルート(31歳以上35歳以下)】
対象者
申請時に31歳以上、35歳以下であること。
求められる日本語能力(入国時)
「N3」相当以上(あるいは国際交流基金日本語基礎テスト「JFT-Basic」の合格など、日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できるレベル)。
制度の意図(即時の適応力)
2023年末の法改正で新たに開かれた特例ルートです。かつては「30歳を超えたら一切不可」でしたが、「自国でしっかり日本語を勉強してきた有能な人材であれば、35歳まで受け入れよう」と緩和されました。
ただし、30代からのスタートとなるため、日本社会や職場へ「即座に溶け込む力」が求められます。そのため、ルートAのように「N5やN4からのスタート(ゼロからの学習)」は許されず、入国する前の段階ですでに「N3」という高い語学力を自力で身につけていることが絶対条件となります。
【具体例で見る「年齢と日本語能力」のリアルな境界線】
実務で遭遇する具体的なケースで、この2つのルートの違いを確認しましょう。
ケース1:マリアさん(29歳)の場合
状況
ブラジル在住。日本文化に興味を持ち、最近日本語の勉強を始めた。現在の語学力は「N5」に合格したばかり。
判定
申請時点で「30歳以下」であるため、【ルートA】が適用され、申請可能です。 日本で働きながら、3年経過時までに「N3」を目指すことになります。
ケース2:ホセさん(31歳)の場合
状況
ペルー在住。日系4世の要件を満たしているが、日本語は挨拶程度しかできず、語学力は「N5」レベル。
判定
申請時点で30歳を超えているため、ルートAは使えません。さらに、「N3」を持っていないため、ルートBの要件も満たせません。結論として、ホセさんは現在のままでは申請不許可(入国不可)となります。
ケース3:ホセさんの再挑戦(33歳時)
状況
上記で不許可となったホセさんは発奮し、ペルーの日本語学校に2年間通い詰め、33歳でついに「N3」に合格した。
判定
31歳以上ですが、年齢上限の35歳以下に収まっており、かつ「N3」を取得したため、【ルートB】が適用され、見事申請可能となります。
【年齢のタイムリミット】
この年齢要件で最も恐ろしいのは、「在留資格認定証明書の交付申請時の年齢で判断されるという点です。
もし依頼者が「現在30歳と11ヶ月、日本語はN4レベル」だった場合、書類の準備にもたついて申請日が31歳の誕生日を1日でも過ぎてしまえば、その瞬間に「N3」がない限り申請できなくなります。
日系4世の手続きにおいては、依頼者の誕生日と日本語試験の合格発表日を逆算した、極めて緻密なスケジュール管理が求められます。
② 日本語能力要件(段階的クリアが絶対):容赦のないタイムリミット
※ 試験の日程やレベルの目安については 日本語能力試験(JLPT)公式サイト をご覧ください。
滞在3年経過時(最初の大きな壁)
入国から3年が経過した時点での在留期間更新において、「N3相当以上」への合格証明書の提出が必須となります。
実務のリアル
もし3年経過時にN3に不合格だった場合、「もう1年だけ猶予をください」という情状酌量は一切通用しません。在留の更新は不許可となり、強制的に帰国となります。日中は工場などで働き、夜間や休日に日本語学校に通い続けるという、強靭な意志が求められます。
③ 素行善良要件と健康要件:過去の清算と健康の証明
素行善良
単なる自己申告ではなく、母国(および過去に居住した国)の警察当局等が発行する「無犯罪証明書(犯罪経歴証明書)」の提出が絶対条件です。軽微な窃盗や薬物事犯の履歴が一つでもあれば不許可となります。
健康要件
日本の公的医療保険(健康保険や国民健康保険)に加入することが義務付けられています。また、入国前に民間の医療保険に加入するなど、日本の医療費制度にタダ乗りしない証明が求められます。
④ 「日系四世受入れサポーター」の存在:単なる保証人ではない
日系4世は、日本での生活を無償で支援してくれる「日系四世受入れサポーター」を確保しなければ入国できません。
サポーターになれる者
日本に住む親族(日本人、永住者、定住者等)、または入管庁が認めた非営利団体(NPO法人等)などに限定されます。単なる雇用先の社長が個人的になることは原則として認められません。
サポーターの義務
単なる身元保証人ではなく、入国時の送迎、住居の確保、銀行口座の開設支援、さらには「月に1回以上の面談」と「入管への定期的な活動状況報告」という重い義務を負います。
【最新の緩和措置(サポーターからの卒業)】
日本に住み始めてから通算3年間、素行不良や法令違反がなく、適正に活動した場合は、サポーターの支援は「不要(免除)」となります。これは「日本社会で自立した」と認定されるためです。
⑤ 家族帯同の原則禁止:単身赴任の絶対ルール
原則として、配偶者や子供を母国から連れてくること(在留資格【家族滞在】等の付与)は一切認められず、単身での滞在が前提となります。
「まずは自分自身が日本の文化と日本語を習得することに専念しなさい」という国からのメッセージです。
🌟 法改正による最大の進歩:5年後の「定住者」への昇格ルート
かつて、この日系4世の在留資格は「最長で通算5年しか日本にいられない」という、いわば期限付きの出稼ぎ在留資格でした。
しかし、2023年12月の制度改正により、ついに【定住者】への在留資格変更(昇格)が認められるようになりました。これが制度の歴史を変えるブレイクスルーです。
【「定住者」へ昇格するための3つの絶対条件】
5年間の適正な滞在
「特定活動(告示第43号)」として、日本で通算5年間、税金・年金・健康保険を1日も滞納することなく、適法に活動したこと。
日本語能力の最終関門 ※ 試験の日程やレベルの目安については 日本語能力試験(JLPT)公式サイト をご覧ください。
「N2相当以上」に合格していること。 日常会話だけでなく、幅広い場面で使われる日本語を理解できるレベルです。就労ビザの高度人材に求められるレベルと同等であり、これが日系4世への「日本社会への完全な統合」の証明となります。
独立生計要件
生活保護などを受けず、自己(または配偶者等)の収入で日本で安定して生活できること。
【昇格のメリット】
「定住者(日系4世への特例付与)」となれば、在留期間の上限(5年)が撤廃されます。そして何より、母国に残してきた配偶者や未成年の子供を「定住者」の家族として日本に呼び寄せ、共に暮らすことが可能になります。 N2取得こそが、日本での永住を勝ち取るための絶対的な鍵なのです。

【具体例で見る、日系4世「カルロス(22歳)」の完全なる軌跡】
法律用語だけでは見えない実務のリアルを、カルロスさんの5年間の軌跡を通じて完全にトレースします。
ステップ1
入国前(ブラジルでの準備)
ブラジル国籍のカルロス(22歳)は、曾祖父が日本人の日系4世です。日本での生活を夢見た彼は、地元の日本語学校に通い、「日本語能力試験 N4」に合格。
日本(群馬県)に住むおじ(日系2世・永住者)に「受入れサポーター」への就任を依頼し、誓約書や生活予定表を作成してもらいました。無犯罪証明書も揃え、在留資格「特定活動(告示第43号)」を取得。単身で来日します。
ステップ2
来日〜3年目(N3の壁とサポーターからの卒業)
群馬県の自動車部品工場で働き始めたカルロス。毎日8時間の労働後、夜はサポーターであるおじが紹介してくれた地域の日本語教室へ。
おじは月に1回カルロスと面談し、入管へ「順調に生活している」と報告書を提出します。 来日から2年半後、カルロスは必死の勉強の末、「N3」に見事合格。3年目の在留資格の更新時に入管へN3の合格証と、未納のない納税証明書を提出。
これにより在留資格の更新が許可されると同時に、「日本で自立できた」と認められ、おじのサポーターとしての義務も正式に終了(免除)しました。
ステップ3
5年経過時(運命の試験と定住者への道)
来日から5年。かつての制度なら強制帰国となる年です。しかしカルロスは、日本人の同僚と積極的にコミュニケーションを取り、専門用語も覚え、ついに難関である「N2」に合格していました。交通違反も一度もなく、年金も毎月給与から天引きで完納しています。
ステップ4
昇格、そして家族との再会
カルロスは、管轄の入国管理局へ【定住者】への在留資格変更許可申請を行いました。数ヶ月の厳格な審査の後、入管は彼の5年間の努力と実績を認め、見事【定住者】(期間3年)への変更を許可しました。
晴れて期限の縛りがなくなったカルロスは、ブラジルで遠距離恋愛を耐え抜いてくれた婚約者を日本へ呼び寄せ、婚姻届を提出。妻も【定住者】(告示第5号ハ)を取得し、二人は日本で永住に向けた新たな人生を歩み始めました。
📊 身分系在留資格の比較サマリー表
在留資格 / 告示番号 | 本記事における該当ケース(具体的な状況) | 該当要件のコア(本質的な理由) |
日本人の配偶者等 (※実子枠・元日本人枠含む) | ①、②(親の日本国籍離脱「前」に生まれた実子) ④のパターンA(もう一方の親が「まだ日本人」の実子) ⑨(元日本人ご本人、または親が日本人の配偶者) | 出生した瞬間に、片親でも「日本人」であったこと。(※本人が過去に日本人であった場合も含む) |
定住者(告示第3号) | ③、④のパターンB(親の国籍離脱「後」に生まれた実子) ⑤、⑥(親の国籍離脱「前」に生まれた実子の、さらに実子=孫) ⑧(親が外国籍に帰化「した後」に生まれた実子=孫) | 親が、出生時に「日本人の実子(日本人の子として出生した者)」としての強力な法的身分を持っていること。 |
定住者(告示第4号) | ⑦(親の国籍離脱「後」に生まれた実子の、さらに実子=日系3世の裏パターン) | 祖父母が「日本人の実子であり、かつて日本の本籍を持っていた元日本人」であること。 |
定住者(告示第5号) | ⑨のケース1の花子さん(日本の血統を持たない、元日本人本人の配偶者)など | 本人が、元日本人の配偶者、または定住者の配偶者であること。 |
定住者(告示第6号) | ⑧(※本文重複箇所:すでに日本にいる親に呼ばれる「連れ子・未成年の実子」) | 日本にいる親の扶養を受ける、未成年で未婚の実子であること。 |
6.各告示の深掘り解説と素行善良要件の真実
📌 告示3号:「日本人の子として出生した者」という法的身分
祖父母のいずれか又は双方が日本国籍離脱の前に親(日本国籍)が生まれ、その後に親が日本国籍離脱の後にその親(日本国籍を離脱したが「日本人の子として出生した者」という法的身分)から生まれた実子(告示3号)
または「祖父母のいずれか又は双方が日本国籍離脱の後(「日本人の子として出生した者」という法的身分)に親(告示3号)が生まれ、その親から生まれた実子(告示4号)。この場合の祖父母が国籍離脱後に生まれた親が告示3号の対象者となります。
三 日本人の子として出生した者の実子(前一号又は第八号に該当する者を除く。)であつて素行が善良であるものに係るもの
この一文は、大きく「2つの要件」「1つの除外規定」で構成されています。それぞれを分解し、なぜそのようなルールになっているのかを解説します。
要件と「なぜそのような要件になるのか」
告示3号を使って在留資格を申請するためには、以下の2つの要件①、②を両方とも満たす必要があります。
【要件①】「日本人の子として出生した者」の「実子」であること
具体的な意味(1)
祖父母が日本人である人(日系3世)、または、元日本人の親(日本人の子として出生した者に限る。)が、日本国籍を離脱した「後」に生まれた人(外国籍として生まれた日系2世)が対象となります。
具体的な意味(2)
元日本人の親(日本人の子として出生した者に限る。)が日本国籍を離脱する「前」(まだ日本国籍であったとき)に生まれた人(日系2世)の実子(日系3世)が対象となります。
なぜこのような要件になるのか(理由と意図)
1990年の入管法改正において、日本政府が「同じ日本人の血統・ルーツを持つ子孫であれば、世代が下って外国籍になっていたとしても、特別に日本での無制限の就労と定住を認めよう」という国策を決定したためです。
この要件は、その「血縁による特別な絆(優遇)」を法律の条件として定義したものです。
※ 日本人の子として出生した者が日本国籍を有する(又は有していた)場合は、その有する間に生まれた子は【日本人の配偶者等】の在留資格に該当することとなり【定住者】ではないことに注意が必要です。
【要件②】「素行が善良であるもの」
入管法における「素行善良」とは、「日本の法律や社会のルールを遵守し、国家の安全や社会秩序を乱すおそれがないこと」を客観的な事実(記録)に基づいて厳格に審査する、極めてドライで法的な基準です。
【「素行善良要件」で審査される4つの絶対基準】

入管の審査において、「素行が善良である」と認められるためには、以下の4つの基準(マイナス要素がないこと)をすべてクリアしなければなりません。
① 母国(または過去の居住国)での犯罪歴がないこと
これが最も重要です。母国において、窃盗、傷害、薬物、詐欺などの犯罪行為で有罪判決を受けていないことが求められます。罰金刑であっても、懲役刑であっても、犯罪の記録(前科)が残っている場合は、原則として「素行が善良ではない」と判断されます。
② 日本国内での犯罪歴がないこと(※過去に来日歴がある場合など)
過去に日本に住んでいたことがある人や、現在別の在留資格(留学生や技能実習生など)で日本にいて【定住者】に変更しようとする人が対象です。 日本の法律に違反し、「罰金(ばっきん)」以上の刑(懲役・禁錮・罰金)を受けたことがある場合は、素行不良とみなされます。万引き、自転車泥棒(窃盗)、喧嘩などによる傷害などがこれに該当します。
③ 軽微な違反を「繰り返して」いないこと
「罰金」などの前科にはならない軽微な違反であっても、何度も繰り返している場合は素行不良とみなされます。 代表的なものが「交通違反」です。スピード違反、駐車違反、一時停止無視などで反則金(青切符)を払っただけであれば「犯罪歴(前科)」にはなりませんが、これを短期間に何度も繰り返していると「法律を守る意思がない(遵法精神がない)」と判断され、不許可の決定的な理由になります。
④ 社会の秩序を乱す活動(反社会的勢力など)に関わっていないこと
暴力団、犯罪組織、テロ組織などの反社会的勢力に属している、あるいは密接な交際がある場合は、犯罪歴の有無にかかわらず一発で素行不良とみなされます。
※ 【絶対に必要な手続き】
外国籍の方の本国の公的機関が発行する「犯罪経歴証明書(無犯罪証明書)」の提出
内容
申請者の母国(例:ブラジルの連邦警察や州警察、ペルーの国家警察など)が、その人の指紋などの生体情報に基づき、「この人物には国全体で犯罪の記録が一切ない」ことを公式に証明する書類です。
厳格なルール
発行から「3ヶ月以内(または6ヶ月以内)」の最新のものでなければなりません。
偽造を防ぐため、「厳封(封筒に封がされ、開けると無効になる状態)」のまま、絶対に開封せずに入管に提出しなければなりません。
もし母国以外の外国に長期間(一般的に継続して6ヶ月以上)住んでいた経歴がある場合は、その「住んでいた外国の警察」からも無犯罪証明書を取り寄せるよう求められることがあります。
【「素行善良要件」の具体例(許可・不許可)】
【許可されるケース(素行善良と認められる)】
ブラジル国籍の日系3世・Aさんの場合
Aさんはブラジルで生まれ育ち、過去に一度も警察の厄介(お世話)になったことはありません。日本の在留資格【定住者】(3号)を申請するにあたり、ブラジルの連邦警察に出向いて「犯罪経歴証明書(無犯罪証明書)」を取得しました。
証明書には「犯罪記録なし」と明記されており、未開封のまま日本の入管へ提出しました。また、反社会的組織との関わりも一切ありません。
【結果と理由】
Aさんは客観的な公的文書によって「素行が善良であること」を完全に立証できたため、要件をクリアし、在留資格【定住者】としての入国が許可されます。
【不許可になるケース①:母国での犯罪歴(過去の過ち)】
ペルー国籍の日系3世・Bさんの場合
Bさんは10年前に母国ペルーで、若気の至りから喧嘩をして相手にケガをさせ、「傷害罪」で有罪判決を受けました。
現在は反省して真面目に働いていますが、今回、日本の在留資格【定住者】(3号)を申請するためにペルー警察から「犯罪経歴証明書」を取り寄せたところ、過去の傷害罪の記録がしっかりと記載されていました。
【結果と理由】
Bさんは入管に書類を提出しましたが、公的記録に犯罪歴が残っている以上、法律の基準である「素行善良要件」を満たさないと機械的に判断されます。どれだけ現在反省していても、過去の記録によって不許可となります。
【不許可になるケース②:日本国内での繰り返しの違反】
ボリビア国籍の日系3世・Cさんの場合
Cさんは「留学生」として日本に住んでいました。この度、学業を終えて日系3世として在留資格【定住者】(3号)へ在留資格を変更しようとしました。
Cさんは母国での犯罪歴はなく、日本でも逮捕されるような犯罪は犯していません。しかし、日本で車を運転中、スピード違反や駐車違反を過去2年間に5回も繰り返し、その都度「反則金(青切符)」を払っていました。
【結果と理由】
反則金は前科にはなりませんが、入管の審査官は警察のシステムを通じてCさんの日本国内での交通違反歴を確認します。
度重なる交通違反は「日本の法律(ルール)を軽視しており、遵法精神に欠ける」と判断されます。その結果、Cさんは「素行が善良ではない」と認定され、定住者への変更は不許可となります。

なぜこのような要件になるのか(理由と意図)
(前回の回答と重なりますが)1990年代に日系人を大量に受け入れた結果、一部の地域で犯罪や非行が多発し、社会問題化しました。
国は「血筋が同じだからといって無条件に受け入れるのは危険だ」と判断し、日本の治安と地域社会の安全を守るための「絶対的な防衛ライン(足切り要件)」として、後からこの厳しい要件(素行善良要件)を条文に付け加えたからです。
手続きの内容と「なぜそのような手続きになるのか」
【手続き①】身分関係を客観的に証明する公的書類の提出
内容
日本の祖父母の戸籍謄本、両親の婚姻証明書や出生証明書、本人の出生証明書などを、母国から取り寄せて、翻訳文も添えて提出します。
なぜそのような手続きになるのか
告示3号は「血統(DNA)」を根拠とするビザだからです。国(入管)の審査官は「顔が日本人っぽいから」といった主観で在留資格を出すことは絶対にできません。
日本から海外へ渡った移民の系譜が、「書類上で1世代も途切れることなく、完全に線で繋がっていること」を客観的かつ法的に立証する責任が、国ではなく申請者側にあるためです。
【手続き②】本国の公的機関が発行する「無犯罪証明書」の提出
内容
本国(ブラジルやペルーなど)の警察当局などが発行する、犯罪記録がないことの証明書を提出します。
なぜそのような手続きになるのか
条文に「素行が善良であること」と明記されている以上、国は「自称・真面目な人」では信用することはできません。
申請者が条文の要件を満たしていることを客観的に証明するためには、国家機関(警察)のお墨付きがある公的な無犯罪記録を提出させるのが、唯一にして絶対の確認方法だからです。
カッコ書きの「除外規定」と「なぜ除外されるのか」
(第一号又は第八号に該当する者を除く。)とは
除外される人(どのような人が当てはまるか)
第一号: 「難民(第三国定住難民など)」として日本に受け入れられる人。
第八号: 「法務大臣が特別な事情を考慮して個別に指定する者」のこと。
なぜこのような規定で除外されるのか(理由)
これは「日系人コミュニティの治安対策」のようなネガティブな理由(ペナルティ)ではありません。「法律上の優先順位」と「審査の重複を避けるためのシステム(交通整理)」が理由です。
例えば、ある外国人が「日系3世」であり、同時に「難民」でもあったとします。この場合、国は彼を「日系人(告示定住 3号)」として扱うよりも、人道的な国際ルールに基づく「難民(1号)」という特別な枠組みで最優先で保護・審査すべきだと考えます。
そのため、「他に優先して適用すべき特別な条文(1号や8号)に当てはまる人は、この一般的な日系人ルート(告示定住 3号)からは除外(除いて計算)しますよ」という、法律同士の交通整理をするためにこの除外規定が設けられています。
💡 告示3号・告示4号の共通ポイント
立証の連鎖(戸籍のパズル)
「祖父母が間違いなく日本人であったこと」「国籍をいつ離脱したのか」「親がいつ生まれたのか」を、日本の「戸籍謄本・除籍謄本」と、現地の「出生証明書」をパズルのように繋ぎ合わせて証明しなければなりません。 海外の出生証明書は後から修正されたり、遅延登録(生まれて何年も経ってから出生届を出すこと)されていたりすると、「本当に血がつながっているのか?」と偽装を疑い、身分関係の信憑性を極めて厳格に審査します。
在留期間
素行や義務の履行の状況などによって5年、3年、1年、6月と状況が良ければ長くなります。
※刑事処分を受けた者はその犯罪及び刑事処分の内容等を勘案し、在留の可否、許可とする場合の在留期間を検討することになります。
📌 告示4号:「親が日本国籍離脱した後に出生した子の子供」(日本国籍離脱した人の孫)
「日本人の子として出生した者でかつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるものの実子の実子」
【国籍離脱後に生まれた親を持つ、日系3世ルート】
1世(祖父母)
日本で「日本人の子として出生した者」として生まれ、日本に本籍があった。その後海外へ渡り、日本国籍を離脱する。
2世(親)
1世が日本国籍を失った後に生まれた。前述の通り、この2世は「日本人の子」ではありません。したがって、この2世の子供(3世)は、「日本人の子として出生した者の実子」という3号の条件から外れてしまいます。
3世(申請者)
3号が使えずピンチ。そこで4号の出番です。
1世(祖父母)は、「日本人の子として出生した者でかつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるもの」です。2世はその「実子」。3世はさらにその「実子」。 結果として祖父母(1世)から見て「実子の実子(孫)」にあたるため、【告示第4号】で無事に定住者になれます。
四 日本人の子として出生した者でかつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるものの実子の実子(前三号又は第八号に該当する者を除く。)であつて素行が善良であるものに係るもの
この条文は、大きく分けて「対象者の要件」「除外規定」「素行善良要件」の3つで構成されています。順を追ってすべてを解き明かします。
告示4号の「対象者の要件」と「適合する人・しない人」
【要件】どのような血筋の人を指しているのか?
「日本人の子として出生した者で、かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるもの」
日本で生まれ、昔は日本の戸籍(日本国籍)を持っていたけれど、外国に帰化するなどして「日本国籍を喪失した元日本人(日系1世)」のこと。
「その日本国籍喪失後の実子」
その元日本人の子供(日系2世)。
「その実子」
その元日本人の孫(日系3世)。
つまり、第4号の要件とは「祖父母が『元日本人』である日系3世であること」です。
【なぜそのような要件になるのか?(理由と意図)】
日本の国籍法では「自分の意志で外国の国籍を取得した者は、自動的に日本国籍を失う(元日本人になる)」と定められています(国籍法11条)。
第3号(祖父母が日本国籍を保持している日系3世)だけでは、移住先の国で生きるために現地の国籍を取得し、日本国籍を失わざるを得なかった「元日本人」の孫たちが定住者の対象から漏れてしまいます。
国は、「祖父母が日本国籍を維持したか、失ったかという法的な履歴の違いだけで、同じ日本人の血を引く孫(3世)の権利を差別するべきではない」と考え、元日本人の孫も平等に救済するために、この第4号という別枠の要件を作りました。
【この要件に適合する人(適用される人)の具体例】
ブラジル国籍のルイスさん(日系3世)の場合
ルイスさんの祖父は、戦前に日本で生まれました(戸籍あり)。その後ブラジルへ移民として渡り、現地で農地を買うためにブラジル国籍を取得しました。
この瞬間、祖父は日本国籍を喪失し「元日本人」となりました。その祖父の息子(ルイスさんの父)から生まれたルイスさんは、「元日本人の孫」です。
結果としてルイスさんの血筋は、この第4号の要件に完全に適合(適応)しています。
【この要件に適合しない人(適用されない人)と、その理由・原因】
ペルー国籍のカルメンさん(日系4世)の場合
カルメンさんの曾祖父(ひいおじいさん)が元日本人であり、カルメンさんは日系「4世」にあたります。
適合しない理由・原因
法律の条文には「実子の実子(孫=3世)」までしか書かれていません。「実子の実子の実子(ひ孫=4世)」という言葉が含まれていないため、法律の文言の限界により、カルメンさんは第4号の要件には適合しません。
※日系4世は【定住者】ではなく「特定活動」という全く別の厳しいビザの対象となります。
告示4号の「手続き」と「なぜその手続きになるのか」
【手続きの内容】
日本の市区町村役場から発行される「祖父母の除籍謄本(じょせきとうほん)」と、母国から発行される祖父母、父母、本人の「出生証明書」「婚姻証明書」などを提出します。
【なぜそのような手続きになるのか?(理由)】
「除籍謄本」とは、その人が日本国籍を失って日本の戸籍から抜けた(バツが印字された)ことを証明する公的記録です。
入管の審査官は、「本当にこの人の祖父は、かつて日本人であり、その後国籍を失ったのか?」という事実を、口頭の主張ではなく、日本政府が管理する公的な戸籍記録(除籍謄本)によってのみ確認・立証するルールになっているからです。
血統の繋がり(DNA)を、紙の公文書で隙間なく証明させることが、ビザの不正取得を防ぐ唯一の手段だからです。
カッコ書きの「除外規定(誰が、なぜ除外されるか)」
(前三号又は第八号に該当する者を除く。)
【誰が除外されるのか?】
前三号(第1号、第3号)
第1号は「難民」。第3号は「祖父母が日本国籍を失っていない(元日本人ではない)日系3世」。(※第2号は現在削除されているため空き番です)。
第八号
法務大臣が特別な事情を考慮して個別に指定する者(中国残留邦人等)。
【なぜ除外になっているのか?(理由と原因)】
これはペナルティ(罰)ではなく、法律の交通整理(重複審査の防止)」が理由です。 もし申請者が「難民(1号)」であるなら、国は日系人としてではなく、人道上の危機にある難民として最優先で別の手続きで保護すべきです。
また、もし申請者の祖父母が「日本国籍を失っていない」のであれば、その人は第4号ではなく、第3号の条文を使うべき人です。
「あなたは別の番号(1号や3号)のルールを使うべき人だから、この4号の列には並ばないでください(除外します)」と案内し、入管の審査の混乱や二重適用を防ぐことが、この除外規定の原因であり目的です。
「素行善良要件」のすべて(要件、手続き、具体例)
第3号と同様、第4号にも条文の最後に「であつて素行が善良であるもの」という最大の壁が立ちはだかります。
【素行善良要件のすべて(クリアすべき条件)】
以下のすべての事実がないこと(クリーンであること)が絶対要件です。
母国(外国)で、刑事犯罪(窃盗、傷害、薬物など)による有罪判決・犯罪記録がないこと。
日本国内で、罰金以上の刑(万引き、喧嘩など)を受けていないこと。
反則金で済むような軽微な違反(スピード違反、駐車違反など)であっても、それを何度も繰り返していないこと。
反社会的組織(マフィア、暴力団など)と関わりがないこと。
【なぜそのような要件になるのか?(理由)】
1990年代の入管法改正で日系人を多数受け入れた結果、言葉の壁や生活の困窮から、一部の地域で日系人による犯罪や不良グループの結成が深刻な社会問題となりました。
国は、「血筋が同じだからといって無条件に入国させると、日本の地域社会の治安が崩壊する」と強い危機感を抱きました。
そのため、「日本のルールを守り、地域社会に害を及ぼさない真面目な人物(素行善良な者)にしか定住を許さない」という、治安維持のための絶対的なフィルターとしてこの要件を組み込みました。
【手続きと、なぜその手続きになるのか】
手続き
母国の国家警察など(ブラジルなら連邦警察)が発行する「犯罪経歴証明書(無犯罪証明書)」を、偽造防止のために「未開封(厳封)」のまま入管に提出します。
なぜその手続きになるのか
「私は真面目です」という本人の言葉や、親戚の推薦状などを国は一切信用しません。その人が母国で犯罪を犯していないことを証明できるのは、その国の犯罪記録を管理している「国家機関(警察)が発行した公文書」以外にこの世に存在しないからです。客観的な公的証拠至上主義が、この手続きの理由です。
【素行善良要件に適用(クリア)する人の具体例】
フィリピン国籍の日系3世・マリアさんの場合
マリアさんは、これまで一度も警察のお世話になったことはありません。日本の定住者ビザを申請するため、フィリピンの国家捜査局(NBI)に行き、自身の犯罪記録がないことを証明する「NBIクリアランス(無犯罪証明書)」を取得し、未開封のまま提出しました。
結果
国家機関の証明により「素行が善良であること」が完全に立証されたため、要件をクリアし、在留資格【定住者】が許可されます。
【素行善良要件から除外(不許可)される人の具体例】
ブラジル国籍の日系3世・ペドロさんの場合
ペドロさんは「留学生」として日本に滞在し、その後日系3世の定住者(第4号)に変更しようとしました。母国での犯罪歴はありませんが、日本で生活している間、車やバイクの「スピード違反」と「一時停止違反」を、過去2年間で合計6回も繰り返し、その都度青切符(反則金)を切られていました。
結果と原因
交通違反の反則金は「前科(犯罪記録)」にはなりませんが、入管は警察のシステムで違反歴を確認します。
これほど短期間に違反を繰り返す行為は、「日本の法律や交通ルールを軽視しており、社会の秩序を守る意思がない」と判断されます。
これが原因となり、ペドロさんは「素行が善良である」とは認められず、在留資格【定住者】への変更は不許可(除外)となります。
💡 告示3号・告示4号の共通ポイント
立証の連鎖(戸籍のパズル)
「祖父母が間違いなく日本人であったこと」「国籍をいつ離脱したのか」「親がいつ生まれたのか」を、日本の「戸籍謄本・除籍謄本」と、現地の「出生証明書」をパズルのように繋ぎ合わせて証明しなければなりません。
海外の出生証明書は後から修正されたり、遅延登録(生まれて何年も経ってから出生届を出すこと)されていたりすると、「本当に血がつながっているのか?」と偽装を疑い、身分関係の信憑性を極めて厳格に審査します。
在留期間
素行や義務の履行の状況などによって5年、3年、1年、6月と状況が良ければ長くなります。
※刑事処分を受けた者はその犯罪及び刑事処分の内容等を勘案し、在留の可否、許可とする場合の在留期間を検討することになります。
7.📋 必須タスクToDoリスト:実務上絶対に必要な6つのステップ
📌 1. 身分関係を証明する公的書類の完全な収集と整合性の確認
【実務のポイント】
日本の戸籍謄本・除籍謄本と、母国(ブラジルやペルー等)の出生証明書・婚姻証明書をすべて集め、氏名や生年月日に矛盾がないか徹底的に確認します。
海外の書類で遅延登録や事後修正がある場合、入管から偽装を疑われるため、なぜ遅れたのかを合理的に説明する追加書類(宣誓供述書など)の準備が実務上極めて重要になります。
📌 2. 母国・滞在国からの「無犯罪証明書(未開封)」の確実な取得
【実務のポイント】
定住者(告示3号・4号等)の申請で絶対に必要な「素行が善良であること」を証明するため、母国の国家警察から犯罪経歴証明書を取得します。
実務上最も注意すべきは「絶対に開封しないこと(厳封)」と「発行から3ヶ月以内(国により6ヶ月)の最新であること」です。過去に長期間住んだ別の国がある場合、その国の証明書も要求されるケースがあります。
📌 3. 日本国内での交通違反歴や微罪の事前洗い出しと申告
【実務のポイント】
日本に既に滞在している留学生などが定住者へ変更する場合、過去の反則金(青切符)履歴が命取りになります。
スピード違反や駐車違反、一時停止無視などがないか、運転記録証明書を取得して事前に正確な回数を把握してください。
複数回の違反がある場合、申請を遅らせるか、深い反省と再発防止策を示す上申書を緻密に作成する必要があります。
📌 4. 日系4世における「年齢と日本語能力」のタイムリミット逆算
【実務のポイント】
日系4世(特定活動43号)は年齢と日本語レベルでルートが分岐します(30歳以下はN5/N4、31〜35歳はN3必須)。
入管への「申請日」時点での年齢が基準となるため、依頼者の誕生日と日本語試験の合格発表日を逆算し、絶対に間に合うスケジュールを引くことが行政書士の腕の見せ所です。1日でも過ぎれば取り返しがつきません。
📌 5. 単独入国する未成年者・連れ子の「生活維持能力」の客観的立証
【実務のポイント】
日本にいる親が本国の未成年の子(告示6号等)を呼び寄せる場合、「本当に親が日本で扶養できるのか」が厳しく審査されます。
親の課税証明書や納税証明書、在職証明書に加え、預金残高や毎月の生活費のシミュレーション表を作成し、子供が経済的に困窮せず適正に教育を受けられる環境であることを数字で明確に証明しなければなりません。
📌 6. 日系4世の「N2取得」と「サポーター要件」の継続的進捗管理
【実務のポイント】
日系4世が将来「定住者」へ昇格するためには、5年経過時までに日本語能力試験「N2」に合格することが絶対条件です。
実務では、入国直後から日本語学校への通学状況を確認し、サポーター(親族や支援団体)と連携して入管への定期報告を怠らないよう管理します。また、税金や健康保険料の未納が1円・1日でもあれば昇格が絶望的になるため、天引きの徹底を指導します。
8.【よくあるご質問】
Q1: 「身分系在留資格(定住者など)」は、一般的な就労ビザと何が違うのですか?
A1: 最大の違いは「就労制限が一切ないこと」です。
一般的な就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)は決められた職種でしか働けませんが、定住者などの身分系ビザは、法律で認められた仕事であれば工場労働や風俗営業店を含め、職種や労働時間の制限なく自由に働くことができます。また、一般的な就労ビザが永住申請までに原則10年の在留を求められるのに対し、定住者は原則「5年」で永住申請が可能になるという、永住への強力な最短ルート(特権)を持っています。
Q2: 日系3世が「定住者」ビザを申請する際、なぜ母国の「無犯罪証明書」が必ず求められるのですか?
A2: 1990年代に日系人を無計画に受け入れた結果、言葉の壁による貧困や孤立が生じ、一部の地域で深刻な犯罪や非行が多発した歴史的背景があるためです。
国は治安維持の防衛策として、「日本のルールを守る素行善良な人物」しか入国を認めない厳格なルール(素行善良要件)を作りました。そのため、本人の自己申告ではなく、母国の国家機関(警察)が発行した公式な犯罪経歴証明書(偽造防止のため未開封・厳封のもの)を提出し、過去の過ちがないことを客観的かつ法的に立証する重い責任が申請者に課されています。
Q3: 日本国内で交通違反の「反則金(青切符)」を払っただけでも、定住者への変更は不許可になりますか?
A3: はい、違反を短期間に「繰り返している」場合は不許可になる可能性が極めて高いです。
例えば、留学生が定住者に変更する際、過去2年間にスピード違反や駐車違反などで5〜6回反則金を払っていた場合(記事内のペドロさんの事例など)、「前科」にはならなくとも、警察のシステムで入管に把握されます。「日本のルールを軽視し、遵法精神に欠ける(素行不良)」と判断されるため、たかが交通違反と甘く見ず、違反履歴の事前確認と、場合によっては申請を遅らせるなどの緻密な対策が必要です。
Q4: 日系4世は「定住者」ビザを取れないと聞きましたが、本当ですか?
A4: 入国時は「特定活動(告示第43号)」という厳しい試用期間のビザからのスタートになりますが、2023年の法改正により「定住者」への昇格ルートが開かれました。
入国時の年齢に応じた日本語要件(30歳以下はN5/N4、31〜35歳はN3)をクリアして単身入国し、日本で5年間税金や保険料を滞納せずに適正に働き、最終的に「日本語能力試験N2」に合格すれば「定住者」へ変更可能です。これにより在留期限の上限がなくなり、母国の家族(配偶者や子)を日本に呼び寄せることも可能になります。
Q5: 「日系人」と「元日本人」はどう違うのですか?
A5: 「日系人」は血統やルーツを示す言葉で、海外移住者の子孫(2世、3世など)を指し、生まれながらに外国籍で日本語を話せない人も多く含まれます。
一方、「元日本人」は国籍の履歴を示す法的な言葉で、出生時は日本国籍を持っていたが、外国への帰化などにより日本国籍を喪失した人(国籍法第11条)を指します。入管法上、「元日本人」の孫に対する救済規定(定住者告示第4号)が存在するなど、この法的なステータスの違いが、適用されるビザの条文を大きく分ける極めて重要な要素となります。
Q6: 元日本人の夫(アメリカ国籍)と結婚している生粋のアメリカ人の妻は、どのビザになりますか?
A6: 夫は出生時に日本人の親から生まれているため、元日本人であっても「日本人の配偶者等(実子枠)」となります。
そして、日本の血統を持たないアメリカ人の妻は、その夫の配偶者であることを理由に「定住者(告示第5号イ)」を取得します。ただし、もし妻自身も「日本人の親から生まれた日系2世」であった場合は、夫にぶら下がるのではなく、妻自身の独立した権利として「日本人の配偶者等」を取得でき、離婚や死別時のリスクをゼロにできる圧倒的なメリットがあります。
Q7: 海外にいる未成年の連れ子を日本に呼び寄せたいのですが、注意点はありますか?
A7: 連れ子や未成年の実子を呼び寄せる場合は「定住者(告示第6号)」に該当しますが、単独入国となるため審査は極めて厳格です。
「日本にいる親が本当に子供を扶養できるのか」という生活維持能力が厳しく問われるため、親の課税証明書や預金残高などで経済力を明確に数字で立証しなければなりません。また、実務上、子供が「18歳前後」になっていると「本当は就労目的ではないか」と疑われやすいため、子供が小さいうちにできる限り早めに呼び寄せの手続きを開始することが重要です。
Q8: 定住者ビザの申請において、行政書士に依頼するメリットは何ですか?
A8:
定住者ビザは「血統のパズル」と呼ばれるほど、日本の戸籍謄本や除籍謄本と、海外の出生証明書を1世代も途切れることなく完全に繋ぎ合わせて立証する高度な専門性が求められます。また、海外書類の遅延登録の合理的な説明や、日系4世のN2取得に向けたタイムリミットの逆算管理、素行不良歴(交通違反等)がある場合の入管へのリカバリー対応など、素人では取り返しがつかなくなる致命的なミスを未然に防ぎ、許可の確率を極限まで高めることができます。

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